昔々あるところに「黄の国」という大きな国がありました。
その国の女王様はわずか14歳。とても乱暴で我侭でした。
気に入らない者は全てギロチンにかけてしまうのです。
女王様にたてつくものは誰もいませんでした。

「黄の国」には国土の五分の一を占める大きな森がありました。
森の東側には村があり、緑の髪をした人たちがそこに住んでいました。
村の人たちの中で、たった一人、白い髪をした女の人がいました。
その女の人 白の娘は子どもの頃からいじめられ、友達もいませんでした。

ある日、白の娘は森に出かけました。その森の中心にある千年樹にお祈りをするためです。

「誰でもいいのです。どうか、どうか私の友達になって下さい」

千年樹の神様は白の娘をかわいそうに思いました。白の娘のために自分の体から、一人の女の人を生み出したのです。
数日後、白の娘は千年樹のそばを通りかかりました。ふと横を見ると、神様が生み出した女の人、緑の娘が倒れていました。
これは大変だと思い、白の娘はその女の人を背負って村に帰りました。
少し経つと、緑の娘は目を覚まし、何度も白の娘にお礼を言いました。
それから何日か白の娘の家で過ごし、色んなことをしゃべっているうちに二人はとても仲良くなりました。
白の娘は最初信じられませんでした。だって、村の人の誰より綺麗な緑の髪をした人が、仲間外れの人間友達になってくれるなんて。
そう緑の娘に聞いたこともありましたが、そうすると彼女は優しく微笑んで白の娘の手を握り、何も言わず白の娘の顔を見つめました。
それでやっとわかりました。この人は本当に私を友達と思ってくれている、もう一人じゃないと。
それから緑の娘に言いました。
この村から出て、二人で一緒に街で暮らそうと。

そうして二人の新しい生活が始まりました。
二人ともお金はそんなにありませんでしたが、なんとか生計を立てて暮らしました。
このままじゃ大変だと二人は思い、仕事を探しました。
そうして裕福な商人の屋敷で働くことになったのです。

ある日、商人の屋敷で青い男を見つけました。
青の国の王子。
あの日、緑の娘が王子と出会わなければ    
王子が彼女を愛さなければ
この悲劇は避けることができたでしょうに。

青の王子は緑の娘に一目惚れをしてしまったのです。
しかし王子にはすでに婚約者がいました。その婚約者とは、黄の国の王女だったのです。
王女は王子を愛していました。しかし王子は彼女の求愛を拒み、緑の娘を愛しました。
王女は嫉妬の炎に焼かれました。
なにがなんでも緑の髪の女達を殺さなければ気が済みませんでした。


それから数日後、緑の村に黄の国の軍隊が押し寄せました。
女たちは全て殺戮され、村は全滅しました。
緑の娘も居所を発見され、ナイフで刺されて殺されました。
白の娘は毎日毎日、涙を流しました。
泣きながら亡骸にすがりました。 どうしてあなたが殺されてしまったの、代わりに私を殺してよ!

何ヵ月かして、白の娘は海辺の教会のそばに引っ越し、教会の孤児院で働くことになりました。
もう黄の国のことを聞かされるのは嫌でした。
赤の軍隊が王女を殺したと聞きましたが、どうでもいいことでした。

それから1ヵ月くらい経ったでしょうか。
教会のすぐそばに少女が倒れていました。
それを見た白の娘はすぐに少女を助けました。
孤児院のベットに寝かせていると彼女は目を覚ましました。
彼女は家族もないし家もないというので、孤児院で暮らすことになりました。


一年ほどたって、白の娘が夜中に教会を歩いていると、懺悔室から人の声が聞こえました。
耳を澄ますとあの助けた少女の声でした。

「ああ、神よ。私はたくさんの人を殺めました。私は黄の国の女王でした。誰もたてつく者はいなかった。それが楽しくてたまらなかった。私はとても罪深い・・」
しくしくと泣き声がする。
白の娘はもう聞いていられませんでした。自分が助けた少女が、緑の少女、親友を殺した張本人だったのですから。そう、彼女はまさに
        悪の娘・・・・・・・・・・・。


昔からこの地に伝わる、古い古い言い伝え。
小瓶に自分の願いを書いた羊皮紙を入れ、海に流すと願いが叶うというものです。
しかし、多くの人はこの伝承の全てを知りませんでした。
願いが叶うには悪魔に命を捧げること、それが条件です。
何の代償もなしに、なんてことはないのです。

今まさに黄の王女  悪の娘がそれを行おうとしている。なんの願いか、なんてどうでもいいこと。
白の娘はふらふらと悪の娘に近づいてゆきます。
その手にはしっかりとナイフが握られ、悪の娘の背中に振り上げ



そのあとの事は悪の娘も白の娘も覚えていません。
しかし、はっきりしているのは悪の娘は死んでいないという事です。
悪の娘は白の娘の過去でした。
とても孤独で寂しい人でした。


ナイフを振り下ろそうとしたとき、視界の隅に入った幻覚
悪の娘によく似た、黄色い髪をした少年
あれは一体誰だったのでしょう。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

白ノ娘

何かが弾けました。
反省もしています、後悔もしています。

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投稿日:2011/12/09 20:19:02

文字数:2,095文字

カテゴリ:小説

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