俺は学校の帰り道、廃れたシャッター街を歩いていた。
夏の割には少し肌寒い。
流行性の風邪と花粉対策として、マスクもしている。
夏は夏らしく暑くなってほしいものだ。
暑すぎるのも嫌だけど。
路地を3つ過ぎたところで俺は足を止めた。
ぼろい赤い看板が目立つ、八百屋・吉有(きちゅう)。
いや、ここに用があるわけではない。
なぜか、そう、あたかも導かれたように俺は足を止めただけだ。
俺の方が理由を知りたいものだ。
Why is it?
「ニィゥ」
と鳴いたのは一匹の白い猫。
路地の中から俺の目をピンポイントで見てくる。
まるで睨まれているようだ。
だが毛は逆立っていない。
怒っているわけではなさそうだ。
「ナゥ」
猫は突然後ろを向き、路地の奥へと歩き出した。
俺はついていく意志もなく、無視する理由もなく、ただ見ていた。
その猫がもういちど振り返れば、俺はついていこう。
そいつの透きとおったやや薄い黄色い瞳。
俺の目がそれをもういちど視認することは、無かった――。
アレがなんだったのか、
いわゆる白昼夢という奴だったのか、
それともただ単に意識のしすぎで、あいつはどこにでもいるような白猫だったのか。
あのときから10年過ぎた今でも、思いだす、晩夏の不思議な話。
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