【世界の終わりの】ワールズエンド・ダンスホール【………恋】


*前編*



「ねえ、私と踊らない?」
「僕と?」

 カクテル・ブルームーンを一口啜って、私は目の前の彼に尋ねた。
 彼はほろ酔い気分の私を見て、少しおどけた笑いを見せたけど、そんなことはもうどうだっていい。
 気分の悪いニュースばかりがこの世の中は蔓延ってる。なんだって、世界が終わっちゃうんだって。笑っちゃうよね。

「……踊りましょうか」
「いいの?」
「いいんですよ、だって今日は世界の終わる日。つまらないことだって笑ってもらったって、明日には何も残らない。何をするにも完璧な日」
「ねえ……あなた、名前は?」
「神威」
「かっこいいね。私はルカ」
「じゃあ……」

 そう言って神威は手を差し伸べた。甲高い声が埋まる部屋で、様々な最低な意味を渦巻かせていたのに、そこだけはなんか違った。
 いいことなんてひとつもないし……さあ、思い切り吐き出しちゃって、どうせ最後なんだから誰も彼も忘れてくれるよ。

 ふと見るとちょうどいい感じのロックナンバーが店内を埋め尽くした。今なら、いいんじゃない?

「……ワルツはいかがです?」
「いいわね、ワルツ、最高!」
「そう言ってもらえると嬉しいです」

 そう言って神威は足を前へ前へと出す。私はそれに従い足を出した。
 神威は次に私の背に手を取り、体を接する姿勢をとった。踊りやすい二派踊りやすいものだ。昔社交ダンスでもやってたのかな、神威はなんだか踊るのがうまかった。初めての人と踊るからか少しだけギクシャクしてたけど、そんなものは特に問題ないものね。
 ホップ、ステップで踊っていってワンツーリズムを刻んでいく。どうせ明日には世界はなくなる……そんな終末感をも孕んで、ダンスは続いていった。他にもダンスをしている男女はいたが、気付けば私たちの方へ目線を変えているのが、周りを見なくても解った。
 そして――曲は終わって、店内は再び甲高い声で埋めつくされた。



つづく。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【世界の終わりの】ワールズエンド・ダンスホール【………恋】 前編

この曲(http://www.nicovideo.jp/watch/sm15245979)を聞いてたらなかなかにイメージが膨らんだので書いてみました!

原曲「ワールズエンド・ダンスホール」:http://www.nicovideo.jp/watch/sm10759623
イメージソング(モチーフ)「【カバー】ワールズエンド・ダンスホール(piano rock ver.)【ルカ,がくぽ】」:http://www.nicovideo.jp/watch/sm15245979

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投稿日:2012/09/03 17:36:54

文字数:851文字

カテゴリ:小説

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