今日も何処かで誰かが泣いている。
 これで3日目。
 僕は声の主を捜すが見付からない。

 1日目は森へ行った。
 2日目は山へ行った。
 今日は海へ行った。
 けれど、見付からない。

 今度聞こえたら、街に行こうか。
 そこなら人が大勢いるから…

「行っても無駄よ」

 突然聞こえた声。
 僕は声の主を捜す。
 けれど、見付からない。

「行っても無駄よ」

 またこの声。
 一体、何処から…

「私達の声が聞こえるのね。
 神はこの世界を見捨てていないという事かしら?」

 神はこの世界を見捨てていない?
 どういう事だろう?

「君が聞いたのは聖霊の声。
 人々が犯した罪により、苦しんでいる。
 だから泣いているの」

 聖霊?
 人々の罪?

「神は人を愛している。
 けれど、人は神を忘れてしまった。
 彼等に私達の声は聞こえない。
 もう、この世界は終わりだと思った」

 人を愛する神。
 神を忘れた人。
 昔話の様な…けれど、現実の話。

 それなら、僕はどうすればいい?
 僕に何が出来る?

「人との接触を絶ちなさい。
 罪の中にいてはいけない。
 そして、次に聖霊の声を聞いたら逃げなさい。
 世界の果てへ…」


 それ以来、僕は人と接触していない。
 山にこもり、隠者として暮らす事を選んだ。
 罪の中にいてはいけない…そう言われたから。
 ここなら、罪に触れる事はない。


 そして、また誰かの泣き声が…

イメージ:
僕-KAITOかがくぽ
私-MEIKOかルカ
聖霊(泣き声の主)-リンかレン

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

声 ~警鐘~

 神話の時代をイメージして書いてみました。
 生きて行く上で声を聞かない人はあまりいないと思いますが、その声の主が判らない場合はどうするのか…
 その声を聞いているのが自分だけで、しかもそれが大切なメッセージだったらどうするのか…
 声を聞くという事を少しだけでも考えてくれたら嬉しいです。

閲覧数:209

投稿日:2011/11/23 16:17:42

文字数:670文字

カテゴリ:その他

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