自分でも何処をどう走ったのか覚えてない。気が付いたら木徒ちゃん迄振り切っちゃってた。人気の無い非常階段で力が抜けてへたり込む。顔が熱を帯びた様に赤くなってるのが鏡を見なくても判った。ダメって言われた事とか、食べられちゃうとか、そんな事より気付いた事に焦っていた。抱っこされて気になって、ダメって言われて気になって、優しくされて欲張りになって、笑顔が見たくて、声が聞きたくて、会いたくて。
「…見付けた。」
「先…!こ、来ないで下さい!」
「風邪引くよ?」
「放っといて下さい!明日…ううん、夜には元に戻りますから!何も無かった
みたいに出来ますから!だから…!」
顔を覆っていた両手を掴まれた。強くはない優しい力で。何も言わず吸い込まれそうな紫の瞳が逸らす事無く真っ直ぐ見詰める。怒ってはいない、悲しんでも、困ってもいない、だけど少し寂しそうな瞳だった。感情の整理が出来なくて涙が理由も判らずぼろぼろ零れた。私何やってるんだろう?何で泣いてるの?判らない…判らないよ…。
「スズミ…。」
先生が名前を呼んだ。後から後から零れる涙をそっと拭いながら、時折頬に手を当てながら、子供をあやす様に私に触れた。大きくて優しい手に身を任せる内に、少しずつ涙が収まって行った。
「嫌がらないんだな。」
「嫌じゃ…ないです…。」
「でも走って逃げた。」
「それは、その…びっくりして。」
涙は収まったけど、顔はまだ熱い、気が付けば先生の腕の中に猫の様に抱きすくめられていた。でも不思議と嫌じゃなくて、触れる手に素直に甘えていた。何だろう?凄く懐かしい様な気分になるのは…まるでどこかで同じ様に触れられていたみたいに…。
「…そんな顔しない。歯止め利かなくなるから。」
「えっ!?あ…ごめんなさい…!」
「もう大丈夫か?」
「は…はい…。」
先生はいつもの顔に戻ってる。スタッフや他の人に向ける『先生』の顔。皆と同じ『先生』の…。待って…先生…待って!
「奏先生。」
「ん?」
「私の事…先生はどう思ってますか?」
「…………。」
立ち上がって背を向けたまま、先生は押し黙った。悩んでいるのか困っているのか呆れているのか判らない。長い沈黙の後先生はポツリと口を開いた。
「嫌いになれない。」
「え…。」
「無視も出来ない、目も放せない、忘れる事も出来ない、誰にも渡したくない、
壊したくない、傷付けたくない、今だって我慢の限界寸前…。」
「ちょっ…先生?!」
「好きだよ。」
「…ふぇっ?!」
先生はのまま振り返らずに行ってしまった。私は立ち上がる事も、呼び止める事もしなかった。と言うか出来なかった。静まり返った階段に自分の心臓の音だけが耳に響いた。
BeastSyndrome -14.キミガスキ-
先生それ言い逃げ(*・ロ・*)
私見ですが『愛してる』より『好き』が好きです。何となくw
※次ページはネタバレ用の為今は見ない事をオススメします。
コメント1
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ご意見・ご感想
門音
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ここでもう既に「素敵作家様」でユーザーブクマしている人間が通りますよっと←
いいなぁ…wwもう2828が止まらないじゃないですか!!(殴
そしてスズミちゃんと奏先生と羽鉦君の三人を描いてみたいという衝動が…(自重無しでw(やめんか
この小説を読むのが家に帰ってきてからの楽しみの一つとなりましたw
では、乱文失礼しましたっ!!(逃
2010/05/27 20:16:19