一時間目の数学が始まって30分経過。教室内はいつも通り、元気で騒がしい。
学年が上がってから急激に難しくなった数学。
単数項、同類項…さっぱり頭に入ってこない。後ろの席には有坂がいる。
数学が意味わかんないという気持ちと後ろに有坂がいるという謎の緊張感に胸が押しつぶされそうだ。まぁ、こんな気持ちはしょっちゅうなので慣れっこだ。
私の隣には元島という去年もクラスが同じだった男子が座っている。ちなみに、元島とは小学校のころも同じだった。めんどくさがりやで頭も悪いのに無駄にモテる、一番私が苦手なタイプだ。だが、元島とは共通の話題がある。それは、好きなアーティストが同じだということ。
このことを知ったのは去年。たまたま元島が友達に話していて、私が反応して意気投合。
軽く三時間は話せるんじゃないかと思っている。元島は話しやすくて、個人的には嫌いではない。時々、話が熱中しすぎて周りから「お前ら付き合えよ」と笑われて、ちょっと元島と話すのを控えようかとも思っている。きっと、無理だと思う。
ふと、時計に目を移せば授業終了まで五分間を切っていた。
私が思うに、この五分間はすごく長く感じる。テストでもそうだ。もう、諦めようと思って時計を確認すると、終了まで10分とか15分とか。なんでだかよく分からないがとっても長く感じる。
そんなことをぼーっと考えていると隣からペンで突かれた。
隣に顔を向けるとやれやれとように馬鹿にしたような顔で元島が見ていた。
何?と口をぱくぱくさせると、元島はノートに「馬鹿みたいにぼーっとしてたから(笑)」と書いてきた。こいつの字は破滅的に読めない。読めてしまう私がどうかしているのだろうか。
元島は書いた字を消した。そして同時にチャイムもなった。
___あっという間に時間は過ぎ、昼休み。
今日もいつもと同じように私は机から本を出した。まだまだ読みきれてない本。
2,3ページほど読むと、後ろから楽しそうな声が聞こえた。興味があるから聞いてみよう。
「有坂くんは好きな子いないの?」
「いないよ。」
後ろから聞こえてきた声は、有坂とその隣の女の子の話し声だった。
仲よさそうに、テンポよく話してるなというのが第一印象。
その反面、羨ましいなという嫉妬も少々。なんだか自分が馬鹿みたいだ。
これ以上、後ろから聞こえる会話を聞いているだけだったら辛くなってしまう。そう思った私は思い切って後ろを振り向いた。振り向いた拍子に有坂と目が合った。
一瞬で目を逸らした。有坂と目が合うことなんか結構あるが、今目があったことはなんだか特別な感じがする。有坂もすぐに目を逸らしたようだが少し赤くなった頬にどこか期待をしてしまう。あぁ、ずるいなぁ。だから有坂は好きだ。
窓から漏れるかすかな太陽の温かさと微妙に吹く春の息吹に心を弾ませ、今日も有坂を想って一日を過ごす。それが私の日常になるのかもしれない___
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