歓声は一瞬にして悲鳴に変わった。ひしめき合っていた人達が混乱し、逃げ惑う。

「リヌ…!リヌ!!しっかりしろ!!」
「リヌちゃん?!」

叫ぶ声に我に返り、もうもうと煙が残る『ステージだった場所』へ急いだ。天井の照明が地面に突き刺さる様に落ちていて、何時倒れるとも知れない不安定さだ。

「くそっ…!誰か!!誰か救護班を!!」
「リヌちゃん!!」
「――――スズミ?!」

ギョッとした。リヌちゃんを必死で呼んでいたその人の口から私の名前が出たから。誰…だろう?全身真っ黒な人…でも…何処かで…。

「ここは危険だ!又天井が落ちる前に早く外へ逃げろ!」
「でもリヌちゃんが…!」
「良いから行け!」

強い口調で言われ思わず身体が強張った。と、その時真っ白な服を着た人とすれ違った。

「重傷者確認。投与します。」
「…っ!…止せ!」

真っ白な人は工場のロボットみたいに、無感情に、あっさりとリヌちゃんに注射器を突き立てた。

「止めろ…リヌがっ…!!」
「投与完了。」
「リヌ…。」

リヌちゃんの怪我は治っていた。何も無かったかの様に、綺麗に治っていた。

「リヌちゃん…。」
「畜生…!!」
「今の…ねぇ、今のは!」
「スズミ!リヌを連れて外へ!ここも危険だ!奴等無差別に霊薬を使う気だ!」
「なっ…?!そんな…!!」
「止めないといけないんだ…俺が止めないと…だから頼むよ!!」
「は…はい!」

どんな怪我でも一瞬で治る。どんな病気でも一瞬で治る。投与して、目の前で傷が綺麗に治った…つまりそれは…それは…!



――獣に落ちた証。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -36.無情の針-

Q.神様はどこにいるの?
 A.探している時点でもう居ません。

Q.どうやったら願いが叶うの?
 A.願わなければ叶える必要が無くなります。

Q.どうすれば良いの?
 A.その答は貴方の中にしかありません。

※次ページは博士の足跡になっています。

閲覧数:286

投稿日:2010/06/09 16:10:30

文字数:674文字

カテゴリ:小説

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