目を開けると天井が見えた。ベッドを占領して私だけ眠ってしまったらしい。

「あ…れ…?詩羽さん…?」

詩羽さんの姿は見えなかった。ベッドから降りた瞬間、何かが割れる音がした。

「詩羽さん?」
「…げほっ…!げほっ!あ…ぐっ…!」
「詩羽さん?!詩羽さん!!」
「木…!…ごめ…そこの薬…取っ…げほげほげほっ!」
「は、はい!」

詩羽さんは真っ青になって咳き込んでいた。もしかして…発作?私の馬鹿…!庇って貰って怪我までさせて眠っちゃうなんて!抑制剤を飲んで暫くすると落ち着いたらしく。詩羽さんはいつもの詩羽さんに戻った様に見えた。まだ青い顔色が嘘を証明してるのに。

「ごめんなさい…。」
「ん?」
「私のせいで詩羽さん怪我したのに…なのに私眠っちゃって!今も発作なの気付けなくて!」
「良いよ、そんなの気にしないで。」
「だけど…!」
「言ったよね?寂しくない様に、怖くない様に、頭のてっぺんから爪の先まで、1ミリの傷も
 許さない程守ってあげるって。」
「…はい…。」
「俺の全身全霊で…いつも側に居て、慈しんで、愛して、大切に大切に守ってあげる…
 そう言ったよね?」

子供をあやす様に抱きすくめられた。腕の中が暖かくて、凄く心地良くて、揺り籠みたいに眠ってしまいそうになる。だけど私は決めていた。守られているだけじゃダメだから、甘えてるだけは嫌だったから。

「じゃあ私は守っちゃいけないの?詩羽さんが怪我しても、苦しんでても、黙って見てないと
 ダメだって言うの?」
「そうは言ってないけど…。」
「私は大好きな人が傷付くの嫌だよ!私だって…私だって頭のてっぺんから爪の先まで、
 1ミリの傷も許さないんだから!」
「…ぶっ…!ちょ…!木徒…おま…猛告白…!ぶはっ…!」
「――はぅっ?!」

顔がカーッと赤くなるのが判った。勢い任せに何言っちゃったんだろう、私。面と向かって『大好きな人』って!確かに猛告白だよ!詩羽さんは何やらツボに入ったらしく壁に向かって激しく笑いむせていた。ああ、もういっそ『わぁ~~~~ん!!』って叫んで走って逃げ出してしまいたい…。

「詩羽さん笑い過ぎ!」
「ごめ…ちょ…ツボ…!げほっ…!」
「だから、つまり私はそれ位真剣に心配して…!」
「そう言う事言ってると…。」
「ひゃっ?!」
「子供に見てあげないよ?」

口に出して気付いた、抱き締められて判った、いつもより深くキスされて思い知った。

「…良いですよ…。」
「ん?」
「私詩羽さんが好きです。」
「え…?」
「子供だからって甘くないんだから!」

噛み付く様に、今度は私がキスを返した。ささやかな反抗と、宣戦布告なんだから!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -44.宣戦布告!-

誰か殴れ

※次ページはネタバレ用の為今は見ない事をオススメします。

閲覧数:305

投稿日:2010/06/15 20:05:19

文字数:1,118文字

カテゴリ:小説

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  • 門音

    門音

    ご意見・ご感想

    よし、私が殴りましょう。
    …と、言いたいところなんですが、よく考えたら私はこいつ(キト)に凄い設定つけてたんですよね;orz
    …逆に殺されそうな気がするので脳内妄想で思う存分殴っときます。

    2010/06/15 19:49:39

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