割とダークです。ご注意ください。
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闇のダンスサイト、二人で踊りましょう。
私は、限界だった。
世の中には耐えられないものがある。例えばいじめとか。劣等感とか。空気の悪さとか。その他諸々、人によって違うのでしょうけど。
私には耐えられませんでした。私そのものが、耐えられませんでした。
あなたが私を愛してくれているのは知っています。私があなたを愛しているのも知っています。
でももう私は逃げる以外の道を選べない。
私とあなたは似た者だった。
暗い昏い道さえわからない奥の方に迷い込んで、二人して帰り道がわからなくなっていた。
あなたといる時間は幸せだった気がします。支離滅裂な感情も、相反する行動も、あなたにならさらけ出すことが出来たのは、きっとあなたが私にとって特別だったから。同時に私があなたにとって特別だったから。
二人でいれば何も気にならなかった。悲しいことも、辛いことも、嬉しいことや夢見ることさえ価値あることとは思えなかった。
完全な世界、とはああいうことを言うのかしら。
それ以上なんてないから喜ばないし期待しない。それ以下なんてないから苦しむことも哀しむこともない。
ああ、ああ、なんて平穏で異常で理想的で歪み切った世界でしょう。
でももうお別れさせて。
「こっち、レン」
「待って、リン」
ある夜。別に特別な夜ではない夜。
私はあなたの手を引いて、走る。
付いて来て。付いて来て。ほらもっと奥に。まだまだここじゃ人目についてしまうから、もっとずっと奥に。
「どこに行くの」
「ずっと奥よ」
ぎゃあぎゃあと鳥がうるさい。静かなはずの森に添えられた狂騒に心が逸る。
うるさいうるさいうるさい。やめて。静かにして。私を放っておいて。全部が苦痛でしかないのだから。
掌からはぬくもり。
―――あなただけには謝るべきかしら。
少し常識的な考えが泡のように浮かぶ。
でもあっという間に、ぱちん、と弾けて消えてしまった。
何を馬鹿なことを。
泡の残滓が嗤う。
レンのことを思うなら、何よりもまずこの手を振り払って、一人で闇の中に駆け込むのが先決のはず。ごめんなさいと言ったところでどこに救いが生まれるというの。
ただ自分の心に自己満足が生まれるだけ。
私は別に許してほしいとは思わない。
あなたを引きずり込んで搦め捕って鎖で縛ってしまったのは私です。
あなたも同じだという嘘をついて、あなたの翼を切り刻んだの。
私に囚われなければあなたの目は帰り道を見つけ出せていたはず。本来の居場所に帰り着けていたはず。
それを阻んだのは、罪でしょう。
だから私は耐えられなくなりました。
心配しないで。断罪も、課刑も、向こうでやってもらうから。
本当は繋いだ手の先からあなたに全てを伝えたい。
言葉なんて中途半端なものじゃ全然伝えることは出来ないから。そう、言葉なんかじゃ絶対ちゃんと伝わりやしない。
「リン、どこまで行く気」
「もう少し」
風が寒い。
世界は闇だ。
痛い怖い嫌い辛い渇く餓える離して苦しい死にたい逃げて助けて助けないで手を伸ばして放っておいて。全部がごちゃごちゃに私を染め変えていく。
そして私の命は、
―――着いた。
息を切らし、達成感に頬が紅潮するのがわかる。
「見て」
くるりとターンをして、私は踊るように両手を広げた。
レンは呆けたようにこちらを見る。
「綺麗でしょう」
背後に広がる、月明かりの世界。
かなり高い崖だから、世界の全てが箱庭のように見える。とてもよく出来たミニチュアみたいな壊れやすいツクリモノの街。
その壊れやすい街には壊れやすい生き物が沢山うごめいている。
あなたと生きた街。
不思議ね。懐かしいはずなのに全然実感がないわ。薄膜の向こうの記憶はぼんやりしていてどこにも捕え所がない。
ニッコリ笑ってみせれば、レンは少し不審そうにしながらも合わせて笑ってくれた。
銀の月光に照らされたあなたはとても綺麗。「そうだね」とあなたは言うけれど、この世界よりあなたの方がずっと綺麗。
いつまでも見ていたいくらい。
でもね、駄目。駄目なの。
だって私には生きていく場所がないわ。全てが整然と造られたあの箱庭には私の入り込む隙間なんてない。
これは妄想?それとも現実?
つきつめて考えるのは疲れたわ。
だから全部夢にしてしまうことに決めたの。現実逃避の決定版よ。
あなたへの言葉は全部嘘。この言葉も嘘。じゃあどれが本当?どれも本当?
やっぱり怪訝そうな顔のままこちらを見るレンに、もう一度笑いかける。
さあ焼き付けて。
これが私の最後の笑顔よ。
ふわりとレンの胸に身を投げかける。
伝わる鼓動。抱き留める手。
まるでワルツでも踊っているような気になる。
―――それもいいかしら。
別れのワルツをあなたと踊る。
全てを計画した私となんにも知らないあなたとで、最期にダンスを。
なんて私達らしい終わりなのでしょう。
あなたと私。天使と塵芥。男と女。白と黒。始めと終わり。右と左。此処と、底。
交わらないその二つ。手を取り、同じステップを踏んだって交わったフリにしかならないんです。
だったらこれ以上あなたを汚さずに済めば1番誰にとっても害がなくていいんじゃない?
私は、満ち足りた笑顔で、思い切りレンの体を突き飛ばした。
よろめいて背中から木にぶつかるレン。
その体が安全な位置にあることを確認して、
ねえレン。私のことを忘れて。
全てを断ち切ってください。
あなただけは、もとの世界に戻って、生きていって欲しいんです。
それが狂いかけた私の唯一の望み。
バイバイ。
その言葉もなく体を宙に舞わせる。
重力が私を引く。
こっちにおいで、と私を引く。
ごめんなさい、やっぱり私
しあわ、
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ご注意ください。
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翔破
昔作文を書いた。
タイトルは『将来の夢』。
『じゃあ、鏡音リンちゃん』
『はい!』
幼い私は喜び勇んで返事をした記憶がある。あの頃はほんとに何も考えてなかったけど。
『わたしは、おおきくなったらおはなやさんになりたいです!』
『にあわねー』
『レンひどーい!っていうかわたしがはっぴょうしてるんだから...両手一杯の(私的恐怖ガーデン)上
翔破
ねえ、私だってわかってる。もう引き返せないんだって。
はじめはささやかなものから始まったはずだった。
「愛してる」
彼の言葉に薄く微笑みながら、私はぼんやりと全ての始まりについて考えていた。
始まりなんて昔過ぎて覚えてない。
―――違う。どこが始まりだなんて線引きができないだけかな。
どこかまでは、...私的赤い花
翔破
何故、戻って来たの。
<造花の薔薇.1>
はあ、と溜め息をつく。
正直なところ書庫の本は読み尽くした。手持ち無沙汰というか…まあ何回読んでも面白い、いわゆる名作というものも確かにあるけれど。でもいかに素晴らしい本であっても、何百回も読めば流石に飽きが来てしまう。
―――外に行けたらいいのに。...造花の薔薇.1
翔破
<サイド・L>
ええと、はじめまして。
俺、こういうの初めてなんで良くわかんないですけど…質問に答えれば良いんですよね?
はい、わかりました。
自己紹介、ですか。名前は鏡音レン、14歳です。
中学?いや、行ってません。
あー、ちょっと特殊な事情がありまして。
虐待!?いやまさか!仲良くやってますよ。...カウンセリング
翔破
「リン、レン、自分の部屋が欲しくないか?」
始まりは父さんの一言だった。
「え―?なんで?」
私は口を尖らせた。だって別に不便があるわけじゃないし、今までもずっと同じ部屋だったし。なんでわざわざ分けなくちゃいけないのかな。
お父さんは暢気な顔で指を立てて見せた。
・・・あんまり可愛くない。いつも以上...私的アドレサンス(前)
翔破
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