その手を引いて 僕は海に飛び込んだ
目尻から溢れ始める涙が 君の悲鳴のようで
浮かぶ気泡を追いかけては 短すぎる手を伸ばした
冷えた指先を暖めるように
君が小さく息を吹きかけた
溢れる気泡
上り詰めては弾けて消える
まるでシャボン玉のようだと
笑える君の涙は海に溶けた
息をすることすら忘れ果てて
泳ぐ僕らをクジラが苦笑う
「そろそろ上がらないと戻れなくなるよ」
「心配ご無用。戻る気なんてさらさらないんだ」
紡ぐたびに溢れる気泡が
僕らのタイムリミットを示しているのだと
気付いていた
気付いていた
だからこそ
その手を離して 僕は君に別れを告げた
目尻から溢れていた君の涙は 当の昔に別れを告げて
僕一人で十分だと 上昇する君へ手を振った
その手を離して 僕は海深くへと潜る
目尻から溢れ続ける涙に 君が気付かないように
君に背を向け小さな声で さようならと呟いた
冷えた指先を暖めるように
僕は小さく息を吹きかけた
溢れる気泡
上り詰めては見えなくなって
もう見えない君の姿を
ただただ想っては涙の洪水
あの手を離して 僕はたった一人になった
何も見えない暗闇の中 ふとはいた息に溢れる気泡は僅か
上るそれは見えなくなって
まるでいなくなった君のようだった
まるで一人きりの僕のようだった
あの手を引いて 僕は海へ飛び込んだ
君の涙を止めたかったわけじゃない
君を笑わせたかったわけでもない
僕はただただ道連れが欲しかった
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