銃の音に思わず目を瞑った。だけど聞こえたのはやっぱりさっきと同じパチパチと言う音で、足元には小さな花がパラパラと降り積もった。闇月幾徒が降り積もった足元の花を手に取る。小さな白い花だった。
「…見えないんじゃなくて…見せなかったのか…。」
「え?」
「武器名『Virgo』…攻撃を一切排除し回復と守りに特化した二つの武器の内一つ。
適合者はおそらく…蛟音聖螺。」
「聖螺が…?!でも、どうして急に?それにこの花…。」
「言魂だ。この花は欠片が飛び散った時の偶然の産物だな。」
「じゃあ、さっき打った言魂が弾かれたのもこの花も聖螺がやったって言うのか?」
武器がどうとか、言魂がどうとかはよく判らない。だけど…一つだけ確信があった。
「まさか…俺を守ってる…のか?」
「そのまさか。見えないのもおそらくそのせいだ。言魂と同化してるから目隠しになって
見えなくなってるんだろう。見えなければ巻き込まれない、傷付けたくないから言魂
からも、危険からも、お前を守って遠ざけようとしてる。」
「聖螺…。」
自分の手と足元の花を見詰めた。俺のせいで怪我して…誘拐までされて…それでも俺を守るって言うのか…?なぁ聖螺…俺はきっとそんなに迄して貰う程価値のある人間じゃない。あの時助けたのだって、自分勝手で気紛れな理由からなのに…。王子様とか、傷付けたくないとか、守ってくれるとか…どんだけ買い被ってんだよ…?
「多分無意識の内に発動させた物だ。しかも見えなかった事を考えるとかなり前からお前を
守っていたんだろうな。」
「…どうしてそこ迄…。」
「アンタが気紛れで助けたからだよ。」
「流船。」
ジュースの缶を幾つも抱えた流船がツカツカと歩いて来た。
「どう言う意味だ?」
「そのままの意味。聖螺は昔っからぽけーっとしてたから変質者だの誘拐だのに何回も
遭って、俺や頼流が助けた事も何度もあった。」
「あー可愛くてボヤボヤしてたらそりゃ狙われるだろうな。」
「…聖螺にとって自分に興味のある男は大半が変質者だったって訳。けどアンタ別に興味も
何もなかったんだろ?『ただ目の前で転びそうだったから助けた』聖螺はそれが凄く
嬉しかったんだよ。」
確かにほんの気紛れだった、興味も無かったし、変な目で見てた覚えも無い。だけどまさかそれが理由なんて…。
「有り得ない。」
「え?」
「ん?」
「無いだろ!無理過ぎだって!ひよこじゃ無いんだからさ!てかそもそも今時王子様って
何だよ!そんで庇って怪我とか守ってるとか…俺なんかに…マジで馬鹿だろあいつ…!」
「その馬鹿が気になるんじゃないのか?」
『私には充分王子様です…。』
泣き顔と笑顔が押し寄せて頭がおかしくなりそうだった。だけど、心の何処かで嬉しいとも思ってた。
「ところで何でこんなにジュースあるんだ?」
「…好みが判んなかったから…。」
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