『まじょとやじゅう』 その1
作:四方山 噺(のんす)
00 『 』
始まりの言葉は、×××××××、であるべきだ。
01 リンちゃんのおでかけ ~ぶらり、レンくん捜索の旅~
ここは魔法の国『クリプトン』。四季の移ろいも儚い、美しい王国です。
この国にはたくさんの人々が、色々な場所でそれぞれの暮らしを満喫しています。
ライオンのリンちゃんもその一人。王国の西に位置する森の、大きな木に住んでいます。
なんで森にライオンなんだよ普通サバンナだろjk、などと言ってはいけません。それこそがリンちゃんの確たる生き様なのです。
ある春の日の事です。リンちゃんには心配事がありました。
弟のレンくんが、大好物のバナナを買いに出かけていったきり、もうまる一日も帰ってこないのです。
弟のレンくん(彼もライオンです)は、ボケかツッコミかでいえば疑う余地なく前者でしたから、しっかりものの姉はこの一日、大変気をもんでいたのです。
自分が探しに行っている間に行き違いになっては面白くありませんから、今の今まで探しに行けなかったのですが、いい加減心配ですので、リンちゃんはレンくんを迎えに行くことにしました。
リンちゃんは、黒地に金のラインが入ったリュックを背負うと、しっかりと家の扉に鍵をかけて森の外へと向かいました。
お気に入りのリュックには、おやつのバナナや水筒のほかに、地図や方位磁石なども詰め込んでいます。
おやつなんかはともかく、地図や方位磁石なんて使わずにいたいものの、なんとなくの危機管理。念には念を入れるのがしっかり者のリンちゃんたるゆえんです。たぶんA型です。
酸っぱいのに、ほんのり甘い不思議な味の赤い木の実。
節くれだってずいぶん折れ曲がった、ひねくれ者の幹。
ぽっかりと、周りの木々が枝を伸ばすのを忘れたように切り抜かれ、陽の差し込む森の広場。
レンくんと外で遊んだら、最後にはいつもたどり着く、岩清水の湧く小さな湖。
リュックを揺さぶりながら、リンちゃんはひとり、森をゆきます。
しばらく歩くと、森の外縁部に到着しました。
リンちゃんは振り返ると、大好きな西の森に元気よくごあいさつです。
「行ってきます!」
森は今日も静かに優しく、おでかけするリンちゃんに手を振ってくれます。
いってらっしゃい。気をつけてね。暗くなるまでには帰ってくるんだよ。…あ、おみやげは下町のナポレオンで。
…さてさて、こうして始まったリンちゃんの冒険。リンちゃんは、無事にレンくんを連れて帰ることができるのでしょうか。
02 エメラルドウサギ
そうそう、リンちゃんをはじめ、この国の住人の大半が動物さんですが、基本的に四足歩行などと言う泥臭い真似はしません。高度な二足歩行も鼻歌まじりにやってのける世界観。
さて、森を後にしたリンちゃんは、ひとまず東に1時間ほど歩いたところにある、小さな町を目指すことにしました。
レンくんがバナナ狩りに行ったバナナ農園もその町に隣接しており、足取りもつかみやすかろう、との配慮からです。なにより情報は自前のアシで稼ぐのがリンちゃんの人探し道。
ていうかすでに、リンちゃんの中で、レンくんはMIA確定のようです。
街道沿いに東へ向けて出発進行、気分はひとりスタンドバイミーです。 …まぁ、探すのは死体ではなく弟なのですが。
町に向かうまでの道のりは至って平穏。何事も無くすぎてゆきます。平和だなぁ。
…訂正、平和ではありませんでした。あまりに唐突なご登場。道ばたになんか緑色の、妙に毛並みのいいけむくじゃらが横たわっておりました。
なにやらさっそくトラブルのYO☆KA☆N
大きい犬を前にしたときのようにビビりながらも、乱雑なシチュエーションは放っておけない性分。A型のリンちゃんは、恐る恐る緑色のけむくじゃらに近寄ってみます。
あと半歩ほどで彼我の間合いに入る、という距離で一度ストップ。リンちゃんはたまたま持ち合わせた釘バットの先端で、例の緑色の毛玉をつっつきます。
あ、バットは用心のためにリュックにぶらさげていたものです。親近感わきますね♪
「うう…」
哀れにもバットでつっつかれた緑色は、うめき声とともに身じろぎします。
ホッ。生きているご様子。これで『故・緑色』だったりしたら、リアルにスタンドバイミーするところでした。
「もし。…もし? 大丈夫ですか?」
問うリンちゃん。
緑色(よく見ればエメラルドなグリーンです)はうめきながらも、言葉を発しました。
「…ね、ねぎ…」
…。
…。
………は?
「ね、ネギを、下さい…アレが無いと、私…うぅ…」
言葉を発したのはいいものの、その内容は極めて意味不明。思わず、探している弟のことも忘れて回れ右したくなりましたが、なんの、リンちゃんは伊達に人情のひとではないのです。できるかぎり助けてさしあげねば。…できるかぁ?
不安になりながらも、ひとまず助け起こしてみることに。手には持ってきた水筒を抱え、緑のひとに飲ませてあげようと口元にもっていきます。ちなみに中身はポカリです。
緑のひとは苦しそうにうめきながらも、命の水(生理食塩水的な意味合いで)を、こくこくと喉をならして飲み込んでゆきます。
水筒の中身を三分の一ほど飲んだ緑子さん(命名:荒ぶる獅子のリンちゃん。そして緑さんはどうやら女性のようです)は、ようやく人心地ついたのか、水筒の飲み口から離れてリンちゃんを見上げます。
視線にも意思の光が宿り、存外しっかりとしているようです。けっこうけっこう。飲み口にへばりついた緑ぃのは、この際見ないフリで参りましょう。
「助かりました、どうもありがとう。 あの、ところで…ネギ、は持っておられませんか…?」
…誠に遺憾ながら。 弟探訪に戻る前に、このお方の身の上話くらいは聞いてさしあげる空気なんだろうなぁ、これ。
>>『まじょとやじゅう その2』へと続く
『まじょとやじゅう』その1 修正済み ※キャラ崩壊注意
コラボ【遊スタ】でのふとした一言から書いてみました。
童話っぽい世界観を取り入れた、メルヘンな小説です。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。よければ読んでみてください。
『まじょとやじゅう』 その2へと続きます。
先を読まれたい方は → をクリックしてください^^
追記:こちらの作品をブックマークして下さったユーザーさんがいらっしゃるようで、『注目の作品』に初めて載ることができました。大変ありがたいことです。すごく励みになります(≧∇≦)
まだまだ非力ですが今後とも、よろしくお願い申し上げます。
追記2:『追記』を書いた時点から本文が途中で途切れるという事態になっていたようなので、さきほど修正しました。(2010/09/30 23:00頃)
気付かないままに『まじょとやじゅう その2』へと進んでしまった方をはじめ、読者の皆さまに大変な御迷惑をおかけしてしまい、すみませんでした; 以後気をつけます…orz
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