「お母さん、ただいま帰りました」
「おーサクおかえりー…って誰その人」
玄関まで出迎えてくれた「お母さん」と呼ばれた女性――少女とも言っても違和感のなさそうな外見だが――は、すぐに、「サク」と呼んだ少女の後ろに立つ青年に気付いた。
「雨の中で一人で濡れてたんです。帰る場所がないみたいなんで、連れてきました」
「え、何それ。…………………まぁいいや。とりあえず、タオル持ってくるから髪とか顔拭いてあげて」
女性は洗面所からタオルを持ってきて少女、もといサクに渡す。サクは、雨水が滴る青年の髪や顔をそのタオルで拭おうとしたが、「自分で出来る」とその手を止められた。
「ねぇ、あなた」
女性は、自ら髪を拭き始めた青年に声をかけた。
「シャワー浴びてきなよ。風邪とかひいたら困るだろうし」
「あ、いや……それは悪い……」
「いいって。というか風邪引かれるとこっちが申し訳ないし」
遠慮がちな返事をする青年に、女性は笑いながら返した。
「脱いだ服はかごに入れといて、洗濯するから。着替えは、んー………多分弟ので大丈夫だと思うんだけど、それでもいい?」
「あ、ああ……済まないな」
「だからいいって。ほら、冷える前に入っちゃって」
こっち、と洗面所まで青年を案内する。
服はこのかごに入れて、あがったらこのバスタオルを使って、などと説明し、着替えは入ってる間に用意しておくからと言って女性は洗面所を出た。
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