「あら、おやつの時間だわ」
この光景は何回目なのだろう。
(またダメだったか……)
悲惨な光景を前に泣いているリリアンヌ
「「もしも生まれ変われるならば……」」
……はっ!
そう言って僕は、小鳥と共に目を覚ました。
「朝…か…」
リリアンヌを救う為に、僕は幾度となくこの展開を繰り返している。
「今日は…まずは中庭の掃除…その後はジョセフィーヌのエサやり…それから…」
僕は自分の時間割を確認していた。
「よっし…」
首元に前回の感触が残っているものの、そんなことは気にしていられない。
僕はいつもの服装に着替え、中庭に向かった。
「遅かったじゃないスか、アレン」
シャルテットに言われ、少し遅刻していたことに気づく。
「あ、ごめん。」
「何かあったんじゃないかと心配したっスよ」
僕以外のことは、時間が繰り返していることを覚えていない。
掃除をしていると、教会の鐘が一つなった。
「あ、ジョセフィーヌにご飯をあげなきゃ…」
そう言ってジョセフィーヌの所へ向かおうとすると、慌てた様子でエルルカがこちらに向かってくる。
今までにこんな出来事は無かったのだけど…
「ア、アレン!王女が、あなたに話が…あるっ…て!」
エルルカは息を切らしながら僕にそう告げた。
「話…?」
「急いで!早く行きなさい!」
「はい!」
僕はジョセフィーヌの餌やりをエルルカに頼み、その場をあとにした。
慌ててリリアンヌの元へ行くと、そこには…。「ア…アレンなのか…?」
泣いているリリアンヌがいた。
「どうしたんですか…?どこか痛いのですか…?」
「違うの…違うのじゃ…ただ、夢を見ていたのじゃ…。」
「どんな夢です?」
「アレンが…アレンが処刑されてしまう夢じゃ…」
「…!?」
おかしい、そんなこと、あるはずがない。
リリアンヌが、王女が、以前の記憶を引き継いで覚えているなんて…。
「アレンが…妾の格好をしておったのじゃ…だけど…妾は何も出来ずに見ていただけ…でも、ハッキリ覚えているのじゃ…」
泣き崩れている王女は、年相応の14歳の少女そのままだった。
「大丈夫ですよ。僕は処刑されません、ずっと、リリアンヌ様にお仕えいたします。」
「違う…違うの…アレン…」
口調も14歳の少女になっているようだった。
「あの光景は夢なんかではない気がするの…同じことが起こっていたような…これから起こるような…」
これでわかった。
リリアンヌは、確実に覚えている、
今までは覚えていることはなかった。
だけど、覚えている以上は、運命を覆すチャンスかもしれない。
「私は…アレンを助けたい…実の姉弟だと、レオンハルトから教えられたわ…だから…」
「リリアンヌ」
「なに…?」
「このままいけば、僕は確かに処刑されてしまう。」
「そんなのイヤ!なんで…どうして…」
処刑される原因をそのまま伝えるには、今の彼女には負担が大きすぎるだろう。
なんと告げるか、悩んでいた。
すると、リリアンヌが口を開いた、
「私…なぜ処刑されたのかわかる気がするの…本来なら私が捕えられて、処刑されてしまうはずだった…だけど…!」
「そう、僕が入れ替わって、リリアンヌを逃がしたんだ。」
「なんでそんなことを!」
「僕は、リリアンヌに生きてほしい。
楽しく生きてほしい、そう願っていたから。」
「僕らは双子だもの、入れ替わっても誰にもわからない。だから、入れ替わって僕が処刑されたんだ。」
リリアンヌは声にならない声で口を開いた。
「やっぱり…私が…いけないのね」
「民衆から支持を得られていないのは…気づいていたわ、いや、あの出来事を見て、気がついたの…。」
「私が変われば…アレンは死なないのね…?今からでも…遅く無い…?私は…アレンを…助けたい…!」
黄の国王女のリリアンヌは、暴君ではなく、普通の少女に戻れるだろうか。
「うん、もちろん。」
「なら、私変わる…許してもらえるとは思わないわ…。私がやってきたことは許されないこと…。だけど、それで少しだけでもアレンの力になれるのなら…。」
その言葉を発した時、リリアンヌの瞳は決意の眼差しに変わっていた。
そう、暴君王女から、14歳の王女様になるための、決意の眼差しに…。
そして、処刑の時間になった…が、
僕もリリアンヌも処刑はされることは無かった。
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リリアンヌは、暴君王女ではなくなったのだ。
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