あれはなんだ・・・?
腐り落ちそうな肌を持った大きな狼のようにも見えるが、鷹のような翼もある。
壊れた悲鳴とともに骨や肉の引き裂ける音が聞こえる。
そして・・・その牙が刺さっているモノは・・
―――!
・・・蝉の鳴き声が聞こえる。
夢か・・・それも過去夢・・・。
何故…嫌悪の強い記憶ほど鮮明に残るのだろう?
1年前・・・オレは最も大切な友を失った。
原因は他殺。犯人の正体は一切不明。
ただ一つ…ヒトではないのは確かである。
そしてオレは今、非日常の中に生きている。
とある盛り場の駅裏にあるネットカフェ…木材で四角に区切られ、
パソコン&ラックとリクライニングシートが置かれている。
そんなところが今のオレの居場所となっている…しかし、
今時冷房もかけずに窓を開け放っているネカフェがあるだろうか?
店長が気を利かして席を空けてくれているが
激安でもなければこんなところを根城にはしない。
「ミツルギハヤト~?なんでまたここなのよ、まったく…」
"いつもの"ようにかつ、当たり前のようにヒトの空間に踏み込んできた上
これまた"いつもの"セリフを吐いてきたのが
小学校からの幼馴染、綾川來深(アヤカワクルミ)だ。
オレは來深の方を見ずに答えた。
髪の毛はいつもポニーテイルで着るものと言ったら柄物のジャージぐらい、
根っからのスポーツ少女のくせにどこか乙女ちっくなとこもある。
なんて面倒なんだろう・・・
「なんでちょくちょく場所変えてるのにわかるんだよ。」
と嫌味を言うが
「探してるんでしょうが。ちょろちょろ場所を変える誰かさんの為に。」
オレが事件をきっかけに進学しなかったことを気にしていて
下校の際に毎回同じことを言いにくるのだ。
もし場所を変えようものなら執拗にオレの場所を探し出し、現れる。
(進学か・・・今は考える気にもならないな)
來深は続けた。
「あんた…痩せてるんだからちゃんと食べる物、食べなさいよね。」
そう言われるのも仕方がない、奥歯がないせいで痩けて見えるのだ。
「そうそう、そんなことよりさぁ」
自分で一々追いかけ回して置いて『そんなこと』もないだろう――
「なんだよ。」
と相槌をうつ。
「例のニュースまたやってたの知ってる?」
來深はオレの機嫌を取るかのように肩を揉みながら問いかけた。
「血痕事件だろ?…
明らかに致死量の血痕が発見されるのに死体が一切見つからなくて、
身に付けていたとされる所持品などだけが発見されるって言う…」
その血痕の数に比例するように行方不明者も増えているが、
ここ数年前から警察も政治家も手に出そうとすらしない。
いわゆる都市伝説と化しかけている。
「そうそれ、あんたも気を付けなさいよね。持ち家のないヒトが
行方不明になるケースが多いんだから…」
オレは小さく頷いた・・・
素直に答えられない事情があるのだ。
「それじゃ、また来るからね!
家族のとこにもたまには顔出しなさいよ?」
(もう来なくていいって…)
「あぁ…」
來深はオレの反応に不満気な表情で帰っていった。
なんの為に通ってきてるんだか・・
話を戻そう、オレの奥歯はどこに行ったのか
実のところ何処という答えはできない。
消費したと言った方が正しいんだ
身体の強化と、剣の形をした物体を生成する超能力。
オレは仕事をする為にその力を手に入れた
願いを叶えるため、友の命を奪った者を見つけるために
文字通り"悪魔に身を捧げた"のである。
こうしておれは契約者となった、、
とんだイカサマ行為付きで……
名古屋駅某所:某時刻
「さぁ、では詳細を説明しますよぉ」
着崩した喪服にシルクハットを被った男が少年に話している
「貴方は自分の願いと名前、それと捧げる贄をこの契約書に記入します」
左手を握り、右手は天を指す胡散臭い仕草をしながら続ける。
「そうすれば契約は終了し、貴方は贄を失うと共に
それに見合った能力を手に入れます」
そういいながら何やら羊皮紙を少年に渡した。
「そして指定された量のイケニエを捧げれば、
晴れて願いがかなえられるわけです♪」
少年は戸惑いながらも言われた通り羊皮紙に書いた。
それが転落の始まりだとも知らずに・・
≪悪魔との契約≫
1、名前をアルファベットで記入すること
2、自分の身体から始贄を選択し、記入すること
3、詳細事項を読んだ上で、それに従った願いを決定・記入すること
4、これを仲介者に提出すること
5、契約成立次第、各々のペースで指定されたイケニエを捧げること
6、一定数の生贄を捧げれば願いが叶います。
契約、代償…そして報酬。
貴方は自分の願いの為になにを捧げられますか?
そして、他人をも代償にしてその報酬を受け取れますか?
これはそんな物語。
願いを叶える為に翻弄される愚かなニンゲンの物語。
さて、今日も"死事"に行くか。
オレは盛り場から離れ、夜の旧市街へと足を運んだ。
-第1話 fin-
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