溢れ返るバラツク聚落を朽ちた雪洞が鈍く照らす
唸る蒸氣、喧しく響き、最中に廓聳へる
紛ひ物の愛を身錢で乞ふ 今宵も軋めくは坐敷の間
光輝燦然と咲く卑し處 鳴り止まむ新内流しの音
縁側に腰掛けて差し仰ぐ
摩天の樓閣よ、御前さんは何思ふ
無間地獄の駕籠の中を
羽根捥がれ、其處に墮つ、忌みじく映ゆし私を
揶揄ひ、嘲笑ひむすか
身を許せど、委ねど、常しへに
此の心は誰にも靡かなひ
何時か、何時か此の鳥籠から
飛び立つてみせむす
かごめかごめ、と口遊ぶ 不知夜月には雲懸かる
びら簪が搖れ、いと靜かに囁く 其れを標とし思ひ立つ
張り巡る監視暗箱を欺ひて
摩天の樓閣におさらばえ、と言渡し
常闇の中へ溶けてゆく
存の外、たは易く鳥籠を拔け出せむした
此れが自由でありむすか
長道拔け、里越え、直走る
柳髮に夜露が零れ落つ
今か今かとあらぬ世を待つ
眼間に見ゆ夜汽車
錆びた鐵の梯子を脇目も振らず昇つて行く
裸足の裏は血が滲んで、掌の豆は潰れて
然して辿り着きしは歩廊 貨物列車に驅け込む
車内には影 金の髮をかき上げてゐた
明け透け無く女は舌囘す
「束の間の夢路は如何でした?」
何も、何も彼も零れ堕ちる
駕籠の外は囹圄でありむした
引き摺られて沈むは底の檻
賤しげなる手枷に繋がれて
何時か、何時かと譫言を撒く
此処は夢の塵塚、籠女の夢の跡
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