救われていたんだ / 鳴花ヒメ・鳴花ミコト
ただ逃げていた。
足は絡んで、脈も早くて、
でも何故だか気は楽だった。
君の背中だけ見えてた。
濡れた靴を引き摺るように、
街をなぞった。
まだ僕らが子供なせいで、
この手から雫が溢れていた。
匂い、形。光の中。
信号機の瞬きすら
置いていくように向こう側へ。
二人で行こう。
器用なんかじゃなかった。
見様見真似で手を差し出した。
君が明日を生きる理由の
一つになれたらそれで良かった。
押し付けたような善の形は
今にも崩れそうだったんだ。
何故だか苦しいんだよ。
こんなに上手に笑えるのに。
満たして。
消えてくれない痛みをまだ、
抱えているまま。
知らないふりして楽になって良いよ。
君は鋭いから、気付いちゃうだろうから。
救ってるつもりで、本当は僕は、
濡れた両手を掴んでずっと離さないように
僕を捕まえて?
子供みたいな我が儘ばかりでごめんね。
君は「優しさなんかじゃない」って、
いつも目を伏せて僕に言うけど、
それでも良い、僕は嬉しかったから。
この雨の音のせいにして今だけは
何も聞こえないふりするから、
抱えているもの、全部吐き出してよ。
根拠も理由もない、
無責任な言葉だって分かってるけど、
大丈夫、大丈夫だよ。
ごめん。
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