ついにこの日がきた。
「大丈夫、大丈夫。落ち着け自分…」
自分にそう言い聞かせ胸に手をおいた
彼は坂上爽太。今年めでたく社会人になったばかりの新米だ
「こ、この辞書通り喋れば…!」
爽太が握る手には付箋がびっしりと付いた分厚い辞書があった
そう、今日彼は長い間片思いをしていた彼女に思いを伝えると決めたんだ
「それにしても遅いなぁ…」
腕時計は待ち合わせの時間をだいぶ過ぎていた
思えばほんの数分前…
「も、もしもし!ぼ、僕だけど!」
ただ電話をするだけなのに声がいように震える
「もしも~し。その声は…井上君?笑」
この妙に響く声と名前を覚えてくれないのは彼女の大きな特徴だった
そう、彼女は長年片思い中の東雲みあ。である
「相変わらずだね、坂上だよ!坂上爽太!」
爽太は必死に自分の名前を連呼する
「坂上君…あぁ、そうだ!坂上君だ!笑」
天然なんだか失礼なのか分からない彼女には昔からたくさん振り回されきた
中学からみあと一緒で特に中学は何もなくて名前ぐらいしかしらなかったが高校に入りみあの隣の席になった時に初めて喋ったのだ
(いつの間にか恋に落ちてて~…ってそうじゃなくて!)
「今日会えない?12時に向日葵公園で」
「全然大丈夫だよ~、分かった!じゃあ後でねっ」
確かに来るって言ったのに…
みあは僕との約束なんて忘れちゃったのかな…
昔から僕は真面目で硬くて、喋るのすらやっとで…変れたと思ったんだけどな…
爽太は自己嫌悪に陥る
こんなとこも昔から変わっていないのだ
「もう帰ろ…」
12時を大幅に過ぎた時計の針を睨むとくるりと向きを変え歩き出そうとした時
「…くーん!…爽太くーん!」
向日葵の中を彼女が駆けてきた
大きく手を振りながらとびきりの笑顔で
「はぁ…はぁ…遅れてごめんねっ!」
みあは呼吸を整えながら頭を下げる
「い、いや、僕も今来たばっかだから!」
あぁ、一時間前からいたって言えばいいのに…
「そうなんだぁ…よかった笑」
みあの笑った顔は本当に綺麗だ
これより綺麗な物を見たことがあるだろうか?
そう、例えるなら向日葵だ!
太陽の光を受けてまばゆい程に輝く
彼女の笑顔は向日葵と似ている
「で、今日はどうしたの?笑」
みあが向日葵のような笑顔で尋ねる
(そうだ…伝えなくちゃ…)
今こそ伝えるんだ!
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