“我が勳(いさおし)は民の平安”
地平に揺れる蜃気楼 砂塵は視界を汚す
褪色飽和した街で 神の子に迫るのは災厄(わざわい)の羽虫か
オアシスの水が涸れる 王は夢を否定する
この手にもっと恵みがあれば 幾万の民を救えるのに
はるか見わたす眼(まなこ)に 映るは翡翠の杜(もり)
彼の大地にはない鮮やかな水と香木の棲家(すみか)
かつて生まれ来た故郷に手をかけるのは許されざる傲慢か?
神は偶人(ゴーレム)を放つ
いざ行かん 彼の地へ 聖なる神木(シダルス・リバニ)の森へ
万人の幸福のためなら神の使徒さえ切り裂き
放たれた獣も己の友に変え
ああ 王は歩む 黄色い陽昇る沙漠の彼方
香木は焼かれて 繁栄への資材(マテリアル)となった
塵芥回帰する森で 魔神は涙流す
命乞いする喉を その刃で突いて弑した
“お前もやがては同じ運命だ”と 最期のそれは呪いか負け惜しみか
天より落ちる燃える牡牛 うぬぼれたヒトどもへの刑罰
香木で建てた街はあえなく潰され焼けてゆく
生みの親の手を離れ理想を望むのは恥知らずな背反か?
王は不敵に笑う
いざ行かん 城下へ 燃える聖丘(アクロポリス)へ
民草の平穏のためならすべての神もこの手で斬る
赤い獣は笑う 王の友に笑う
“哀れだな 人の栄光なぞに目を奪われたが故に―――――”
燎原の火は静まった ウルクの街は救われた
けれども偶人(ゴーレム)の友は朽ち果ててゆく
“哀しむな これは俺の宿命(さだめ)”
“創造主に背いたこの身への刑罰だ――――”
還りゆく 造られた 裏切り者の魂
最後の神々の使いが死の御手で彼を連れ去る
王は怯えた 迫りくるこの身への断罪と終焉(おわり)に
ああ 永遠の栄光よ何処(いずこ)
賢者は静かに笑う “永遠などさして良いものではない”
自分の眠りすらものにできない愚かで罪深き子供たちは
限りなき夢を求めて 自ら護(まも)りから離れ
必ず朽ちてゆく死罪の運命を課せられた
幾百の刻(とき)を超えて この地に残るのは絶望
翡翠の輝きは割れ ただ永遠の黄砂へと化す
街は消え人が息を止め 神すらもいなくなる
“我(わたし)はどうすればよかったのか” 今はただ蹲(うずくま)り嘆くのみ――――
この沙漠の上で――――
残されたサイゴの雫が落ちてゆく
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