奇麗な儘、失くした
記憶は然ても呪いと成って
亡霊の聲で目覚めた
痛覚が過去に走り出して
遥か遠い夏の思い出が
殊更、眩暈を急かすように
離れ離れの彼の日の僕ら
今更、花弁を探す旅に出ようか
行かないでと言えたなら
世界の色彩は少し変わるだろうか
伝え損ねた言葉が
今も、今も、此処に在るのだ
感情の名前も知らない儘
左手(ゆんで)に落ちた亡霊の熱が
約束を果たせずに冷め切って
夏の言葉に悴んで征く
さらば、秘事を乗せた火花
区々の悲哀を照らすように
蟠りを乗せて頭上に咲け
お別れにしよう、此の儘にしよう、どうか
狂おしく啄んだ鳥籠の数秒間が
漸(ようや)く断ち切った其の聲と混ざる
八釜しく劈いた記憶通りの音象は
小さな、小さな願い事を叶える為に
手を取って引く事すら出来ずに
失われた日から続く今日が
君の幻影を寫した儘
僕達を彼の日に連れ戻して仕舞うな
大切と思えた総ての詩
いつか掠れた落書きと共に
此の喧騒の中に埋む儘
静かな方へ傾いて仕舞う
君の名前を叫ぶ事すら
許されないような気がしていた
何処か知らない未来で君に
会えますように、会えますように、なんて
まだ、まだ君の姿が焼き付いた儘
どうか僕だけの前に現れてよなんて思って仕舞うんだ
さらば、朝焼けが照らす在り処
お別れの為の君宛の詩
僕達の言葉で伝えるから
さよならだけは言わないでくれ
絶え間なく此れからも続く日が
君の面影を透過した儘
進む事しか出来ない僕らを
泣き腫らした顔で笑う君の
聲が遠退いて仕舞うような
時計の針が動き出すような
そんな、寂しらな夏の音を
聞き逃さない為に今は叫ぼうか
君が書き残した言葉から
未来が始まった
幾重の色で染め上げた記憶の
深い場所で眠る君がくれた世界を
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