【オリジナルマスター】 ―Grasp― 第十一話 【アキラ編】

投稿日:2009/11/28 15:56:27 | 文字数:5,070文字 | 閲覧数:152 | カテゴリ:小説

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マスターの設定で異様に盛り上がり、自作マスターの人気に作者が嫉妬し出す頃、
なんとコラボで書きませんかとお誘いが。コラボ相手の大物っぷりにぷるぷるしてます。

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アキラ、いろいろ思い出して当たりちらすの巻。じつはアキラはこういう子でした。
悠サンはいいめいわくだよね!(爽笑

前回はフラグ回といいましたが、今回は地雷回です/(^o^)\ 書くことなにもない。
強いて言えば、こはさんのファンの方及び悠サンファン、ついでにアキラのファンに
刺されても文句言えないと思って書いてたよ! ってなところです! これの草案を
渡したときにこはさんを泣かせてしまったとか言えな……おや、だれかきたようだ。

あ、作中の「恋は罪悪だよ」のくだりは、夏目漱石先生の「こころ」から引用させて
いただきました。個人的にこの言葉は真理だと思います。異論反論はあるでしょうが、
ともかく文学作品としての「こころ」はオススメ! 一度でいいから読んでみて!

悠編では、先輩が話を聞いてくれてるようなので、こちらも是非!

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白瀬悠さんの生みの親で、悠編を担当している桜宮小春さんのページはこちら!
http://piapro.jp/haru_nemu_202

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TEXT
 

オリジナルのマスターに力を入れすぎた結果、なんとコラボで書けることになった。
オリジナルマスターがメイン、というか、マスター(♂)×マスター(♀)です、新ジャンル!
そして、ところによりカイメイ風味です、苦手な方は注意!

コラボ相手は、かの純情物語師(つんばる命名)、桜宮小春さんです!
(つ´ω`)<ゆっくりしていってね!>(・ω・春)



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 気分が落ち込んでいる時というのは、なにもしたくなくなるもので、動くことすら億劫だった私は、窓からの光がオレンジに変わり、そしてやがて光がなくなって街灯の光が申し訳程度に見える頃になっても、布団の上に身体を横たえたままだった。

(調子がくるう)

 パソコンはとっくのむかしにスリープモードに落ちている。パソコンデスクから線を伸ばして床に落ちたままのヘッドフォンをちらりと見遣る。見遣るたびに、早く片づけないと断線してしまうかもしれないと思うのだが、なぜか触るのさえためらわれた。
 あのヘッドフォンも、そこから聞こえる音も、ぜんぶきたないものではないはずなのに。
 否、きたないものではないからこそ、触れるのがためらわれるのか。

(私は汚れている気がする)

 もそりと布団の上から起きだして、手を洗いに立った時、部屋の暗がりの中で見た時計の文字盤は、既に一日が終わりにさしかかっていることを示していた。



―Grasp―
アキラ編 第十一話



 暗い洗面所に立つと、自分が色白なのがよくわかる。蒼白というにはやや血色がいいだけの、先天的な色の白さ。友達にも病人のようだと言われ、色素が薄いことを羨ましがられたりもしたが、望んで手に入れたものではないので、褒められてもあまり嬉しくない(遺伝なんだからしかたがないだろう)。
 ちょいちょいと跳ねた髪を撫でつけて、夜ごはんはどうしようかなどとぼんやり考えていると、玄関チャイムが鳴った。
 なんだ。配達屋か? 最近はなにも頼んでないはずだけれど、もしかして忘れている注文がなにかあっただろうか。そう思いつつ、不用意にドアを開けたのがまずかった。

「……よう」
「……ッ!」

 思わず押し開けたドアを引き戻――そうとして、がっとドアの扉部分を掴まれて、閉じようとしたドアはぎりぎり閉じないままの状態で留まった。
 こちらはドアノブをはっしと掴んだまま、引く手を緩めない。すると、ドアを掴んでいるひとも、なんとかこじ開けようと力を入れて引っ張ってくるので、負けじとこちらも強くノブを引く。もしかしてこのままだとドアノブが取れてしまうんじゃなかろうか。

「お、い……アキラ……! なんで、いきなり閉めようと、する、っ……!」
「な、んの、用、ですかッ、ハルちゃん、先輩ッ……!」
「訊きながら閉め、ようと、すんなっ……! いいから、開けろっ、って……!」
「だ、から、なんの用か、言え、ば、開けるかどーか、きめ、ます、って……!」

 ぎぎぎぎ、と、ドアが不穏な音を立てているが、なぜか負けられない気分になってきて、力を込める。ぐぐぐ、とドアを挟んで拮抗した沈黙の時間が流れ、その沈黙を破ったのは悠サンの方だった。

「――ミクの置いて行った荷物を取りにきた! だから開けろ!」

 ふっと手の力を抜くと、扉はあっけなく悠サンの方に引かれ――勢いで悠サンがこけたか躓いたかしたようだったが、私はもう玄関に背を向けていたので、詳細はよくわからない。

「おい、アキラ!」

 俺で遊ぶな、といわんばかりの、非難の声を背に、私は、パソコンに挿したままのUSBメモリをぶつりと抜いた。テーブルの上に置いておいた初音さんのポシェットも持って、再び玄関に戻る。
 すっと差し出すと、相手は慌てて手を差し伸べてきた。その手のひらにUSBメモリを落とすと、相手はすぐに確認した。USBメモリの外層が光を反射するたび、嫌でもあの中に録音されていた声を思い出してしまい、私は思わず眉をひそめた。

「……はい。返しましたよ。とっとと帰ってください」
「俺の用はそれだけじゃない」
「コラボのことですか。編曲データはきちんと受け取りました。あとはこっちに投げてくれても結構です、私が全部やっておきます。大丈夫、ちゃんと編曲のところに名前は――」
「そうじゃなくて、まだ俺は、お前の『答え』を聞いてない!」

 訊かれていないものには答えられない、なんて、そんな詭弁はこのひとには通用しないだろう。というより、そんなことを言ったらストレートに悠サンのことが好きか嫌いかを訊かれそうだ。
 それは、私にとって答えられない問いだから、避けなければならない――答えられない? なぜ?
 ああ、まずい。混乱してきた。

「……なんなんですか。なんでそこまで私を気にするんですか。おかしいですよ、放っておいてください」
「おかしいのはお前の方だ、なんで濁すんだ! 逃げるなんてアキラらしくもない!」
「逃げる? 誰が!」
「お前だよ! 何が怖いのか知らないが……かたくなに逃げようとしてるようにしか見えない!」
「知った風な口を……!」

 何も知らないくせに、なんて、きっと、私が言う資格なんてない。けれど、たしかに、このひとにはわからない。私が、どんなおもいをしたのかなんて、このひとにはわからない。拳に爪が食い込むけれど、痛みなんて感じている場合じゃない。
 こらえていたきもちが、あふれだして、とまらなくなる。


 あの冬の日、私は『そのひと』の許へ行くのに、往復分の新幹線の切符を手に、3日ぶんの泊まり荷物を持って、雪のないホームに降り立った。予定通りの早朝5時、ついたよ、と、メールするにも憚られる時間帯。こんなに朝早く来るなんて言っていないし、きっと相手もそのつもりはないだろうから、ちょっと驚かせてやろう。どうせ合鍵も持っているのだ、勝手に上がって朝ごはんでも作ってやったら喜ばれるだろうか。
 そんな浮ついた想像をしながら、私は改札をくぐり、見慣れない街の、歩き慣れたそのアパートまでの道のりを、歩いていた。そうしてほどなく見えてきたアパート、何度もくぐったその扉、鍵を開けて、玄関に入った私は、鉢合わせるのだ。


「恋は罪悪だよ! わかってるの、悠サン!」

 悲鳴に似た声が、響いた。口調も、表情も、繕っている暇なんかない。早く帰ってくれ、私に姿を見せないでくれ。これ以上、私が誰かを――あなたを、傷つけないために。

「……ミクに何か言われたのか」
「初音さんに何か言われたくらいで、私がどうにかなるとでも!?」

 違う。彼女のせいじゃない。わかっている。ぜんぶ私がわるいんだ。
 些細なことで昔を思い出して、勝手に悲しんで、勝手に自己嫌悪して――私が勝手な振る舞いをしているから、初音さんまで傷つけた。なんと罪深い。なんと業の深い。

「悠サンはおかしいよ、どうして私なんかを気にかけるんだ! なんでそんなばかな真似するのさ! 何が目的? 私には、あんたにあげられるものなんかなにもないのに!」


 そのひとの家で鉢合わせたのは、私のしらない女の人だった。誰、とも、どうして、とも、何も訊けなかった。だって、そんなことは、自分の置かれた状況と、その女の人の格好を見れば明らかだったのだ。
 早朝5時。その女のひとの、すこし崩れ気味の化粧。あらわになった肌に鮮やかな、おびただしい数の赤い痕。遅れて出てきたそのひとの、驚いたような顔。

 つまり、結局、そのひとにとって、恋人というのは、遠いものより近いもの――遠距離でなかなか会いに来られない私より、近場でみつけた頭の悪そうな女のほうが適当だった、ということだ。

『なんで泣かないんだよ』
『泣いてほしいの? 泣いてどうにかなるのかい?』
 ――キミのために泣いて、キミが戻ってくるとしても、私はキミのためになんか泣かないだろう。
『俺がもうあんなことしないし、晶の望むとおりになんでもしてやるって言ったら、わるくない条件だろ、晶?』
『条件としてはわるくない。でも、キミがそれを守るかどうかははなはだ怪しい』
 ――ごめんね、私は、もうキミを信じることができない。
『晶はもっと賢い女だと思ったのにな。ざんねんだよ』
 それは、買い被りすぎだ。それとも、そうであったほうが、キミにとって都合がよかったとでもいうのだろうか。
『さよならだ』
 そうして、私は、そのひとが私に求めていたことを、何一つかなえられないまま、そのひとと別れたのだ。最後に握ったそのひとの手は、冬の風にさらされて、とてもとても冷たかった。


「――どうせ、私には無理なんだ、私を好きな誰かに、私がしてあげられることなんてないんだ! へんな期待はしないでもらえるかな!」

 おとこのひとの手は、冷たい方がいい。できるだけ離れがたくない方がいい。
 あたたかいものは安心してしまう。
 おとこのひとというものは、安心してはいけないもののひとつだ。だからこそ、おとこのひとの手は、冷たくなければならない。
 不用意に安心してしまわないように。

「でも、もういいんだ、初音さんには嫌われたんだ、平手ひとつ受けたんだから彼女だって文句ないはずだ!」

 そうして、いつか突然に暴力的に、かなしいやりかたで終わってしまうかもしれない『恋』や、それにまつわるいさかいを、初音さんからの平手ひとつで避けられたのなら安いものだと思う。
 誰かに恋をして、別の誰かを傷つける可能性。それを考えずに――過去のそのひとや、そのひとの連れ込んだあの女の人のように――盲目的な恋に走れるほど愚かではない。いや、臆病になったというべきか。私は、私のように、誰かを恨んだり妬んだりするひとを出したくない。ましてや、じぶんがその怨み嫉みの対象になるなんてまっぴらごめんだ。第二の私を出したくはない。
 けれど、これが自分以外のためではないことも、私はわかっている。これは誰のためでもない。私のための予防線だ。これは、かぎりなく自己防衛のみを目的とした他者への配慮だ。深く愛さなければ、裏切りに絶望することもない。ひつよう以上に近づかなければ、好きになることも嫌いになることもない。
 だから、近づいてほしくないのだ。
 頭の中身が渦を巻く。思考が支離滅裂になって、口から出る言葉と、頭の中身の整合性がとれているのかぜんぜんわからない。私は一体なにをしゃべっているのだろう。論理的になっているだろうか。いつもの冷静さを、すこしでも繕うことができているだろうか。
 悠サンの姿が、滲んでかすんでよく見えない。息が苦しい。それでも、誰にどういう風にたすけを求めていいのか、わからない。

「私だって痛かったけど、でも、それで悠サンが私を好きにも嫌いにもならないでいてくれるなら安いもんなんだよ!」

 私はこれ以上、誰のことも嫌いになりたくない。
 これ以上、あなたのことを嫌いになりたくない。
 だから、もう近づかないで。私を好きにならないで。

「近づかないでください、好きにならないでください、きっと嫌になる日がきます、他にいいひとはたくさんいます、だから」

 ――言っていて、やっとじぶんが「ほんとうに言いたいこと」に気がついた。どうして今まで気づかなかったのだろう。
 私の「好きにならないでください」は、「嫌いにならないでください」と、同じ意味だったのだ。
 私にとって、「好かれる」ということは、「嫌われる可能性」とほぼ同義語だ。だからこそ、好意は避けて通るべきだと思っていたし、嫌われないためなら好かれなくてもいいとすら思っていたのだ。
 なんだ、ようするに私はこのひとに嫌われたくないのか。初音さんには嫌われてもいいくせに、このひとには嫌われたくないなんて。
 ばかみたいだ。どうして気づかなかった。

「お願いだから、どうせ捨てるなら好きだなんて言わないで……!」

 もうとっくに、このひとは、私が「嫌われたくない」と思ってしまうくらいの存在だったというのに。

 何も言わずに頭を撫でる手が大きかった。
 どうして、なんで、私は、いつも、こうして勘違いして、男の人の手に安心してしまうのだろう。

 鼻がつんとして、私はやっと、さっきから視界がわるかった理由を知る。床がすこし濡れていた。

つんばるといいます。世の中のすみっこでしがないモノカキやってます。
MEIKOがすきです。KAITOがすきです。カイメイがすきです。

写真素材はサイズ・色調その他、改変自由のフリー素材です。お好きにどうぞ。
なにかが誰かの琴線に触れたらさいわいです。

⇒ブログ:http://phantomlake.blog58.fc2.com/
⇒メール:croak-crash【あっとまーく】hotmail.co.jp

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