全速で飛び続けてどの位経っただろうか、ようやく施設に辿り着いた。

――――Pipipipipipipi…Pipipipipipipi…

「どうした?」
「第7班、現地到着しました。突入しますか?」
「いや、一度合流する。場所は?」
「施設の南東です。」
「おいっ…!何だお前!!」
「?!どうした?!おい!大丈夫か?!」

電話の向こうの声に冷や汗を覚え急いで施設南東に降下した。と、第7班に誰かが囲まれている様だった。

「何事だ?大丈夫か?」
「バット様!」
「バットさん!…いや、あの、いきなりこいつが…。」
「こいつ…?って、お前…!闇月羽鉦!!何で此処に!!」
「愚問。」

聞いて置いてなんだが確かに愚問だった。こいつが騎士とスズミを助けに来ない訳が無い。だけど…。

「一人…?」
「ああ、悪い、全部隊【Yggdrasil】の各施設防衛に送っちゃった。」
「バット様、こいつ何なんですか?言っちゃなんだけど一人じゃはっきり言って
 足手纏いなんじゃ…。」
「啓輔さん、それに羽鉦さんも、来てくれたんですね。」
「律!」
「状況は?」
「3時間前から施設内のBSが小康状態になっています。この歌が洗脳効果を鎮めて
 くれている様ですが、それでもメタルアームには効いていない。突入するには奴等
 との戦闘は回避出来ません。」

隊員にざわざわと動揺が走ったのが判る。この中にはメタルアームBSと戦って怪我をした奴も少なくない、奴等の強さ、恐さは身に染みて判っているから…。

「律、施設内はある程度動けるか?」
「はい、正気であれば戦闘は回避出来ます。施設もそれほど大規模ではありません
 から虱潰しに当たったとしても長時間は掛からないと思われます。」
「…30分だ。俺があいつ等を引き受けるから、お前達で突入出来るか?」
「はぁ?!引き受けるって…お前メタル野郎知ってんのか?!車とか粉々にする奴だぞ!
 それも1人2人じゃない!」
「だろうな。じゃ、突入よろしく。」
「よろしくって…。」

と、羽鉦は不意にこちらに顔を向けて言った。

「…啓輔。」
「うん?」
「騎士はずっとお前を待ってた、ずっとずっと…お前に会いたい、お前を救いたいと。
 怒りも恨みも、あいつの中には微塵も無い、今でもお前を親友だと思って待ってる。」
「…………。」
「2人の事、頼む。」
「待っ…!!」

一瞬笑顔を見せて、そのまま本当に1人で走って行った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -104.待ってる-

単騎突入

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投稿日:2010/07/09 03:23:28

文字数:1,027文字

カテゴリ:小説

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