??『・・・なぁ、シモン。オレさ、いつかこの理不尽な世界を変えたい。オレらみたいな徘徊者って呼ばれる人間達も、普通に暮らせる世界を作りたい。』
絶対王政の中心、ヴェルモンテ宮殿がある方を見ながら、あの日君は夢を語ってくれた。
??『だから、シモン。オレと一緒に・・・革命を起こそう。』
夕日に照らされた君の黒髪が、風に靡いて綺麗だった。
・・・君ならきっと、そんな世界を作ってくれる。
淡い期待と確かな信頼が、ぼくの背を押したんだ。
シモン『・・・うん。ぼくも、ルイと一緒に革命を起こしたい。こんな日常を、壊したい。』
子供の空想。
脆い夢。
絵空事だったけど、あの時のぼくらは叶うって信じてたんだ。
・・・それなのに。
シモン「・・・今、どこにいるの?ルイ。」
革命前夜の紅い月夜。
ぼくの隣に、君はいなかった。
ブラッディ・ムーン
◆◆◆
ここは、フランシェ王国。
世界に名の知れた、絶対王政の大国。
他国からは、産業大国で人々は裕福な暮らしをしていると思われがちだが、実際は違う。
貴族が甘い蜜を啜り、庶民がそれを支え、徘徊者が全ての階級の不平不満を一身に受ける。
シモン=ド=モンフォールは、そんな狂った国で、徘徊者として生まれた。
父親を知らなければ母親も知らない彼は、生まれた時からゴミ溜めみたいな街で、同じ徘徊者の女性に母乳を貰い、生きてきた。
女性『シモン。この国で、私達徘徊者が生きていくためには、目立たず、静かに生活するの。貴族に目をつけられたら最後。・・・確実に、死ぬわ。』
自分を育ててくれた女性にそう言われ、忠実にその言葉を守っていたシモン。
大人の膝くらいになるまでに成長した彼は、ある日、出会う。
ルイ『オレは、ルイ。よろしくな、シモン!!』
後に、シモンが革命を起こすきっかけを作った少年・・・ルイと。
この時のシモンは、まだ先の未来など知らなかった。
◆◆◆
ルイ『シモンさぁ、お前夢とかあんの?』
シモン『・・・こんなゴミ溜めみたいな場所で、夢も希望もあるもんか。』
吐き捨てるようにそう言ったシモンに、ルイは苦笑を零す。
ルイ『子供のくせに、随分と大人びたこと言うよな、シモン。』
シモン『ぼくを育ててくれたジェニファーさんが言ってたもん。・・・“この国で、私達徘徊者が生きていくためには、目立たず、静かに生活するの。”って。』
ルイ『それは、一理ある。けどさ、やっぱり夢とか見たいじゃん。貴族の女に見初められて、貴族になる、とかさ。』
キラキラした目でそう言うルイに、シモンは変なものを見るような目を向ける。
だけど、その目に僅かに羨ましさを滲ませていた。
(・・・いいなぁ、ルイは。そうやって、思ったことを言葉に出来て。ぼくには、出来ないや。)
シモンにだって、夢がある。
いつか、このゴミ溜めみたいな場所を出て幸せを掴む、なんて幻想が。
でも、それを口にする程の勇気が、彼にはない。
ルイ『まっ。シモンのそういう冷静なとこ、オレは好きだぜ。』
シモン『ぼくもルイのそういう夢見がちなとこ、好きだよ。』
ルイ『夢見がちとかやめろよ!!女みたいじゃん!!』
茜色の空の下、2人は笑い合う。
・・・互いに本当の夢を、心に抱きながら。
◆◆◆
シモン『ルイ、ルイっ!!ルイを離せ!!』
警官に取り押さえられながら、シモンは連れて行かれそうなルイへと手を伸ばす。
“・・・なぁ、シモン。オレさ、いつかこの理不尽な世界を変えたい。オレらみたいな徘徊者って呼ばれる人間達も、普通に暮らせる世界を作りたい。”
そうルイが言った、次の日の出来事だった。
まるで誰かが密告したかのようなタイミングの良さに、怒りが込み上げてくる。
シモン『離せぇぇぇぇぇぇっ!!』
警官『ちっ、うるせぇガキだな。殺すか。』
拳銃を取り出し、シモンへと銃口を向ける警官。
(このまま、ぼくが死んでルイが解放されれば・・・。)
シモンがきつく目を閉じた、その時。
ルイ『やめて。シモンは、殺さないで。・・・オレが着いていけばいいんでしょ?』
ルイが感情を押し殺した声で、そう言った。
それはすなわち、自分が犠牲になるからシモンを解放しろ。という意味だと、シモンは直感的にそう思った。
シモン『や!!やだっ!!行かないで、ルイ!!』
ルイ『・・・お前は、夢を掴め。』
ルイはシモンとお揃いのヘアピンを外すと、シモンの髪へ挿す。
シモン『嫌だっ!!ルイ、ルイっ!!』
ルイ『・・・地獄で待ってる。』
茜色の空の下、笑い合った時のように綺麗な笑みを零すと、ルイは警官と共にその場を後にする。
残されたシモンは、ただ。
シモン『うわぁぁぁぁぁぁっ!!』
己の不甲斐なさを嘆いて、空に向かって吼えた。
これは、シモンがまだ13歳。
・・・革命の、5年前の日の出来事だった。
ブラッディ・ムーン Episode 0
革命前夜より少し前をイメージして書いた小説です
本格的な小説の企画は進んでいるので、もうしばらくお待ちください
続き等はpixivに載せていこうと思ってます
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