戦隊物のコスプレなんて初めてしたけど意外としっくりくる物だった。衣装自体は少し派手目な普段着みたいな物だし顔もヒーローっぽいゴーグルで隠れてて見えない。これならちょっとは無茶な事やっても大丈夫!

「…死亡フラグ…?」

…話は少し前に遡る。うんざりする様な打ち合わせを重ねた後、いよいよイベントの本番を迎えた。表向きはヒーローショーを兼ねた野外コンサート。そんでもって俺達にとっては世界を救う一大作戦の決行日を迎えた。スタッフを集め最後の打ち合わせの時眼鏡野郎は言った。

「流船を核にして文字化けの集合体を作るから、他の皆は文字化けと暴走するで
 あろう流船を言魂で『制御』、最適合者が判明したら集合体に何らかの言魂を
 打ち込んで止める。」

要するに最適合者って言うのを炙り出す迄ヒーローの振りして観客を守れって事だった。打ち合わせや訓練もしたし、皆それなりの心構えをしていた…筈だった。

「じゃあもうすぐ本番に…。」
「キャー!!ユアンとキラだぁー!!本物――!!」
「ちょ、ここは立ち入り禁止で…!すいません入らないで…!」

黄色い声と共に二人のファンがスタッフルームに押し掛けた。有名人も大変だな、なんて暢気に構えて居たんだけど…。

―――バチッ!

無線から火花みたいな音がしたと思うと、イヤホンから耳を割る様な大音量が響いた。

「うわぁっ?!な…何?!」
「あ…。」
「………………『あ…。』って何?!ちょっと?!嫌な予感しかしないんだけど?!」

慌てて無線に話したけどそれらしい返答は無かった。本部に戻った方が良いのか、それとも持ち場を離れない方が良いのか迷っていると、見慣れた顔が見慣れないマント姿で現れた。

「あ、王子様兄さん、丁度良かった、何かトラブってるみたいで…。」
「…消去…。」
「へ?…ごふぁっ?!」

聞き返すや否や有り得ない蹴りで冗談みたいに吹っ飛ばされたと思うと、積んであったダンボール山に突っ込んでいた。え?何?何で俺王子様に蹴られてんの?と頭に『???』が浮かんでいると、無線からやっと声が聞こえた。

「クロアくーん、ハーミットレッド君、無事ー?」
「や…何か王子様に蹴られたんだけど…何の冗談?」
「えーっとね、時間無いから結論だけ言うと…12対1。」

数字が頭をひゅーっと掠めて飛んで行って、また戻って来た。12対1?え?何?どう言う意味?

「…よく…解らないんだけど…?」
「機材ショートしてクロア君以外暴走しちゃったみたい…行けそう?多分気絶とかすれば
 正気に戻ると思うんだけど…。」
「この前さ『何人かは暴走するかも?』とか言ってなかったっけ?」
「うん、言った。」
「…死亡フラグ…?」

永遠とも取れる数秒の沈黙の後ある意味死刑宣告の様な暢気な声が聞こえた。

「レッド君ふぁーいと♪」
「無理だろぉおあああああああ!!!!!」

取り敢えず二発目の王子様キックを紙一重で避けるのが精一杯だった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コトダマシ-99.ふぁーいと♪-

頑張れレッド、負けるなレッド

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投稿日:2011/04/26 16:04:36

文字数:1,238文字

カテゴリ:小説

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