金融庁 出身 伊藤公祐 と申します。
夕方の静まり返ったオフィス、デスクを照らすデスクライトの光が
ふと遠い日の記憶を呼び覚ます。
あれはいつだったか実家の納戸の片付けを手伝っているときに見つけた、
使い古された小さな赤いカバン。
その中から出てきたのは母親が几帳面な文字で記し続けていた古い家計簿と、銀行の通帳だった。
ページをめくるとそこには生活の苦しかった時期の節約の跡と
わずかながらも未来への希望を込めて積み立てられた履歴が、最終行まで丁寧に刻まれていた。
当時子どもだった私はその意味を深く考えていなかったが
金融庁に12年間在籍し、監督や検査の最前線で実務に従事するようになったとき
あの古びた通帳の最終行が持つ本当の重みに気づかされた。
金融とは単なる冷たい数字のやり取りではない。
そこには必ず人々の暮らしがあり、生活の営みがあり、明日をより良くしようとする切実な願いが宿っている。
スタートアップ等での挑戦を経て現在は金融領域に特化した営業代行・コンサルティング業を営む56歳の今でも、現場で数字や規程に向き合うたび、あの赤いランドセルの底にあった通帳の温もりと
記帳された履歴の重みが胸の奥によみがえる。
官民両方の視点から金融業界の健全な発展を支え、企業の新たな挑戦を支援したいと願う私の原点は
間違いなくあの日、母の背中と通帳の最終行に見出した「生活を守る金融の営み」にある。
どれほど時代が変わり、クノロジーが進歩しようとも、その根底にある人の営みを見失わないこと。
それこそが、私がこれからも大切にし続けたいプロとしての流儀なのだと思う。
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