“拝啓
紅葉もじきに終わりますね。
そちらの様子はどうですか? そろそろ慣れた頃ですか?”
白い紙に走る僕、その色はさながら残り時間。
インクで薄まらない想いをまたひとつ、湖へ。
くちなしの花をちぎって栞にしていたんだ。
あの日をいつも思い出せるように。
どうしようもないこの愛は冗長だ。
ただずっと「またきっと会えるだろう」なんて、
朧朧と、茫茫と。
中途半端な想いで散って舞った白花を見る。
なぜか泣いてしまいたくて。
甲斐性ない哀傷歌を唄う口を縫っていく。
『さらば!』
笑った君がまだ網膜に焼き付いてる。
“拝啓
紅葉が浮かぶ頃ですね。
そちらの様子はどうですか? そろそろ冷たくなりますか?”
白い紙に滲む色。さよならは得てしてエゴイスチック。
インクは減るばかり。思い出は澱となるばかり。
梔子の花は患ったような実になって月の光を閉じ込めている。
どうしようもないこの恋は執着だ。
ただずっと「またね」って言葉だけ欲しくて。
傲慢な怯弱な中途半端な僕だ。
散って舞った白花をただ今も抱き締めたいだけ。
甲斐性ない哀傷歌を聴く耳も塞げない。
『さらば!』
笑った君がまだ網膜から放せない。
きっと僕は怒っている、
『恋しい』なんて君が呪うから。
きっと僕に怒っている、
さよならの合図が聞けなかったから。
きっと、なんてくだらなくて
それでも紅葉は湖面を覆って。
きっと本当は泣きたいだけ。
もう今日を愛おしむ理由もないから。
ただ沈めるのは最終便。
掠れた色で、忘れた声で、
“拝啓
寂しい季節になりました。
元気にしていますか? 幸せになれましたか?
もうお互い何も言えないから、残りの人生で書きたいのです。
ねえ、今までずっと、ごめんね。”
最低だ、最低だ。中途半端な僕だ。
知ってたんだ、白花。泣いたら全て消えてしまうのでしょう。
甲斐性ない哀傷歌を唄う口が震えている。
『さらば!』
笑った君に今、さよならを告げるように、
「さらば」
笑った僕はまだ得意顔になれない。
“ああ、最後にもうひとつ、敬具代わりの意地悪を。
僕は君が本当に心から大好きでした。”
コメント0
関連する動画0
ご意見・ご感想