「おはよう。」
ヘッドフォンのせいで、聴こえないフリをした。


桜が咲いている。
校庭の長い坂道に、今年の花びら達が。
ふと木の下で立ち止まり、空を仰いだ。
視界には鮮やかな青、ほのかな桃の色。
そしてそれを支える柱が、自分をより小さく見せた。

どこからか風が吹き、孤独を感じてせつなくなる。
心にも吹雪いてくるようで、何故か自分が嫌になる。
人は不快な心理に会うと、その場所も嫌いになるもの。
本人に逃げ出すつもりはなくとも、再び歩を進め出す。
左右左右、無意識に。
校門へ向かって、無意識に。
さっきよりも少し、俯きながら・・・。


校門の前に、駅で見た後ろ姿を見つける。
すがるように、ヘッドフォンを外した。
合流して1つになる後ろ姿。
それを見て少し歩を緩めた。
何故か少し笑って・・・。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

無声のヘッドフォン

ゆっくり読んで欲しいです。

閲覧数:103

投稿日:2011/07/12 20:07:42

文字数:352文字

カテゴリ:小説

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