いきなり車に押し込められて、何処をどう走ったのか判らない、永遠にも取れる時間の後、この場所に着いた。車から引き出されると、顔も判らない白衣の人達が機械的に私達を調べ、そして、今は部屋に一人取り残された。部屋にはベッドと小さな棚と窓が一つ、テレビも無い。入った事無いけど監獄ってきっとこんな感じ。

「…では…はい…。」
「お気を付け下さい、彼等は…。」

ドアの向こうで話し声がするけどよく聞き取れない。たまに響く足音やドアの音すら怖くて堪らない。ベッドにすら触れずそのまま床に縮こまる。耳を覆って、顔を伏せて、自分をギュッと抱き締めた。

「怖いよぉ…!」

耐え切れず零れた声すら、闇の中に掻き消えた。

―――トントントン。

心臓が飛び出るかと思った。

―――トントントン。

ノック…?誰?誰なの?またさっきみたいに調べられるの?

―――トントントン。

嫌!嫌!怖いよ!絶対開けない!開けないんだから!帰ってよ…もう帰ってよ!

「大丈夫、助けに来るよ。窓を開けて、名前を呼んであげて。」
「…え…?」
「彼等は君を見捨てられない、君も彼等を気にせずには居られない。」
「誰…?」
「必ず助けに来るよ、だから信じなさい。信じて、名前を呼んで、その手を取りなさい。」
「待って…!」

ドアを開けた時、もう其処に人影は無かった。代わりの様に、床に銀色のペンダントが落ちていた。少しくすんだ銃弾の様な形のトップが闇に光っていた。何だか少し気になり、そのペンダントを身に着けた。私は部屋に戻ると、ゆっくりと窓を開く。何階なのか判らない、下を見ると目が眩んだ。

『何かあったら、俺を呼んで。』

呼んだら来てくれる?

『助けて欲しいなら、名前を呼んで。』

本当に来てくれる?

『俺でも、翡翠でも、使土でもノアでも良い。助けて欲しいなら、名前を呼んで。』

私を助けになんて来てくれるの?何も出来ないのに、危険なのに、助けに来てくれるの?

『これ以上関わらないで貰えますか?』

あの人は拒絶したじゃない。

『私は貴女を遠ざけたい。』

呼んだって来る筈なんてない。

『おかしな人ですね、全く。』

呆れられたじゃない!呼んだって、叫んだって、絶対私を助けになんて来ないよ!

『もう泣かないで下さい…。』



「―――助けて…。」



名前を呼ぶから、声を枯らしても、届かなくても、届くまで…叫ぶから…!



「―――――翡翠さんっ!!!」



助けて…!!!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -40.声を枯らして-

名前を呼ぶから だから助けて!

※次ページにどうしてもどうしてな人が居ます。(苦笑

閲覧数:354

投稿日:2010/06/12 17:34:18

文字数:1,046文字

カテゴリ:小説

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  • 門音

    門音

    ご意見・ご感想

    仕方ねぇなぁ、誉めてやるよ…
    …と言おうと思ったけど、締まってないからやっぱやめ!(www
    ありがとうございます!やっぱりシドには「不憫」タグがぴったりだ、という確信が持てました!!(おいw
    そしてリヌちゃん健気ですね…可愛いなぁw

    2010/06/12 17:14:48

  • 遊羅@右肩逝きかけ

    遊羅@右肩逝きかけ

    ご意見・ご感想

    ちょ…w
    フラグktkrwwwwww
    思わず目を疑って5・6回くらい読み返しましたwwwww

    2010/06/12 17:01:54

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