聖螺の居場所が判ったと言う連絡を受けて、俺を含む適合者はホテルの一室に集まっていた。
「逃げて来たのは適合者の餡音鈴々。武器はそのまま置いて来たらしく不明、彼女を監禁場所
から逃がしたのが凱瑠クロアという少年だ。」
「鈴々にクロア?あの二人も適合者なのか?」
「何だ知り合いか?ゼロ。」
「まぁ…少し…。」
「二人が登録してたアプリサイトから現在地履歴を辿った結果、最終的に電源が切られた地点
が一致。加えて餡音鈴々の証言から施設や規模、周囲環境に置いて該当する場所は…
此処だ。」
画面に目まぐるしく流れた検索の文字の後、地図と建物の映像が映し出された。
「…え?…怪奇スポット?!」
「恐っ!」
「見ての通り廃墟になっているが、かつて此処には相楽研究所と言う施設があったらしい。」
「廃墟って、じゃあ勝手に使ってるって事?」
「そう言う事になるな。」
いかにも幽霊が出そうな廃墟の画面を見詰めていると、ゼロが口を開いた。
「結局そいつ等何なんだよ?聖…適合者誘拐して監禁して何するつもりだ?」
「残念ながら彼女の証言からは向こうの正体も意図も不明だ。聞いた限りでは例の『黒い翼の男』
の他に白衣を着たスタッフらしき奴等も居たらしい。」
「…どうするの?」
「準備が整い次第夜明けを待たずに襲撃する。間を置けば聖螺も凱瑠クロアも危険だからな。
すぐ支度して欲しい。」
「判った。」
スタッフがバラバラと部屋を出て行くのに続こうとした時だった。
「流船、芽結、それとゼロ、少し残ってくれ。」
「何?」
「…今ならまだ戻れる。」
「え?」
「聖螺を助けたい気持ちがあるのは判るが、これから行く場所は今までとは違う。相手の正体も、
場所も、情報が少な過ぎる。…正直言って、お前等の身の安全は保証出来ない。幾ら適合者でも
そんな危険を冒させる権利は俺には無い。」
「…抜けるなら今だって事?」
「…ああ…。」
思い詰めた顔だった。幾徒は幾徒なりに辛いんだろうに、いつも危険を自分だけで引き受けようとしてる。ああ、少し頼流に似てるんだ…。
「今更だろ。」
「同じく。」
「私も頑張ります、幾徒さん。」
「…ありがとう…。」
珍しく素直だと思った次の瞬間、目の前にガシャガシャと銃が置かれた。
「そう言ってくれると思ったよ~!いやぁ、お前等見上げた根性だよなぁ~!はいはい、じゃあ
武器こっちに持ち替えて部屋行って支度しようか?」
「は…?」
「あ、因みにこの武器は適合者に完全同調させた謂わば各自の専用!コトダマとかアクセスの
コールも不要の優れ物!ワードと引き金がリンクしてるから持ったまま話したりすると大惨事
だから気を付けて!」
「幾徒さん…あの…悪いんですけど…。」
「全力で。」
「躊躇無く。」
「「「ぶん殴って良いですか?!」」」
コトダマシ-45.ぶん殴って良いですか?!-
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