第一回講義。

「今日は西暦2514年、4月・・え~っと・・。」
「9日。」
「ありがと。9日っと。」
教室使用の届け出を同期の院生と事務室に提出する任を黒田教授から仰せつかった。
同期と言うだけで特に何もないが、超絶美人の女子と二人っきりでこういうやり取りができるのは
男としては誇らしい限りである。
腰ほどまでに伸びたその黒髪は前屈みになった彼女の肩から短めのスカートまで伝い、ペンを動かすたびにスラスラ揺れて、何とも言えぬ興奮が・・・じゃない。俺は変態ではない。今の無し。
「申告者、『松戸 結衣』っと・・。できたよー。」
「お疲れ様。」
そう。彼女の名前は松戸 結衣。俺の同期にして我が研究室が誇る魅惑の魔女。
本人に自覚はないが、研究室の中で繰り広げられる様々な思わせぶりな彼女の行動はその称号を得るまでになった。
ここではあえて割愛させてもらおう。
というか、古傷が痛むので勘弁してほしい。
「柏木君?聞いてる?」
とフェードインしてくる彼女の声に驚くとともに顔を近づけてくる天使に「わひゃい」なんて驚いてしまったものだから、咳払いをする。
「しっかりしてよ。ほら、来週柏木君の実験でしょ?実験棟の教室押さえとかなくていいの?」
「そうでしたそうでした。」
と、ペンを受け取る。
ここで俺は考える。
かわいい女子あらばかっこつけたくなるのが男の性というものではないだろうか。
知ってる難しい単語を並べてみたり、普段やりもしないのに老人に席を譲る。
乗り物に乗っていたらあほみたいに速度をあげ、返事は「おぅ。」とか「まぁな。」とか。
これはもはや理だ。
幸い今なら誰も見てない。ペンを机の上に置いた。
「あれ?柏木君・・・?」
心配して覗き込んでくる松戸さんを手で制する俺、超クール。
脳をフル回転させて考えられる事象とエネルギーの分配。構築。
汲み上げるイメージにディテールを加える。
俺が今どうしたいのか。
そのためには何が必要なのか。
構築の上で重要なのは準備なのだ。
オブジェクトについては物体の構造、形状、材質。
行動においては、骨の形成、位置の始端、終端の座標値、オイラー角の指定。
すべてをコントロールを決められた法則に従い構築してこそ初めて魔法が可能となる。
あまりのコントロールの多さに鼻血がでそうになる。
キャラ物は失敗だったか?

ペンから生足。無駄気の一切ない完璧なフォルム、肉体美的な何かを叩き込んだその足は準備運動をしだす。
どうだこの演出力は。そしてこの短時間だ。と作ってみて案外の良作に自分でも鼻高々。
走り出すペン。
「柏木君、すご・・・。」
松戸さんも喜んでるな。と、微笑ましくなったのその瞬間。
移動パスの設定を忘れていたことに気付いた。
すでに行き場を失っているペンは猛スピードで同じ場所をぐるぐるとまわり始めている。
「柏木君、これちょっとやばくない?ねぇ?」

高速回転したペン(に足の生えたもの)はまるで狂った猿のように暴れ始めている。
「ペンの加速度をマイナスに。ベクトル初期化・・・」
ペンを止めようと停止ロジックを試みるが、ペンはひょいひょい避けて机の上を荒らしに荒らした挙句、彼女にインクを吐き掛け、机の下に飛び降りてどこかに走り去った。


「柏木君・・・。」
彼女の凍てつくような冷たい目が刺さる。
しかしそんな顔も美少女だから、おそるべし、松戸さん。
松戸さんのレア顔を見れて俺は少し素敵な気分になった。
その反面、後悔から押し寄せるやっちまった感が俺を急き立てるのだ。
素敵な気持ちとやっちまった感を両立させたこの感覚は俺の心情パラメータとしてはプラスかマイナスでいえば大いにマイナスだ。
「あ~・・、違うんだよ。事務仕事ばっかりでストレスたまってるんじゃないかと・・・その・・・ペンが。」
「魔法の使用は事務局だと禁止されてるの知ってますか。というか、どこでも乱用はいけません。」
「そう、だよね。」
俺は知っている。優等生キャラになった松戸さんは相当怒っていることの証だ。
「柏木君は私に何か恨みでもあるんやろか。」
「ないない。」
俺は知っている。出身は関東なのに何故か関西弁キャラになった松戸さんは怒っていることの証だ。
「生足が女性のものでした。いやらしい・・」
俺は知っている。女性衆議院議員みたいに妙にセクハラに敏感になっている松戸さんは怒っていることの証だ。
「今書いた教室使用の申請書まで書き直しなのかしら。」
俺は知っている。顔はにっこりしているが目が笑っていない松戸さんは普通に怒っている。

キャラが安定してない松戸さんが新鮮でほっこりするけども、この先を思うと凍ろうかというほどの冷や汗が流れ出るのを感じた。

「死ね。」

松戸さんのその言葉と平手打ちは、確実に俺の心へと大魔法を詠唱していたのだ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【小説】常識科学の魔法学1

どこまでかけるかわかりませんが小説を書いてみようと思います。
「てにをは」苦手な方なのでかなり無茶かもしれませんが。

2)http://piapro.jp/t/v7gt

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投稿日:2016/02/03 15:24:50

文字数:1,999文字

カテゴリ:小説

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