こんにちは!石田大顕です。
水に沈んだ無機質な部屋の中で私たちは音のない呼吸を繰り返している。冷たいガラス越しに見える景色はどこまでも曖昧で底の知れない深淵のように青く濁っている。かつて鮮やかな色を誇っていたはずの造花は静かな水流に撫でられながら少しずつその輪郭を溶かしひっそりと終わりの時を待っている。
私たちは誰もが完璧な美しさを求めて自分の本心を硬い殻の中に閉じ込めてしまう。傷つくことを恐れるあまり呼吸の仕方すら忘れてしまった水槽の中でただ静かに漂い続けることを選ぶ。けれどその澱んだ水の中で見せる不格好なもがきや声にならない叫び声こそが生きているという確かな証拠なのだと信じたい。
周囲の視線や期待に応えようとするほどに私たちは本来の姿から遠ざかりいつしか自分が何を望んでいたのかすら分からなくなってしまう。無菌室のように何一つ不純物のない空間は確かに安全かもしれないがそこでは何も生まれず何も育たない。整えられた偽物の美しさよりも溶け出して形を失っていく過程にこそ痛いほどの命の熱量が宿っている。色褪せた花びらが水に溶け込み周囲を濁らせていくその瞬間は決して美しいだけのものではない。そこには目を背けたくなるような執着や後悔そしてどうしても捨てきれない微かな希望が複雑に絡み合っている。
冷たい水の中でゆっくりと崩壊していく造花を見つめながら私たちは自分自身の抱える歪な感情と向き合っていく。誰にも届かないかもしれないその微弱な脈拍はそれでも確かにこの場所で響き続けている。言葉にできない孤独やどこにも行き場のない悲しみが水に溶けていく造花の色と混ざり合いやがて誰も見たことのない新しい色彩を生み出していく。いつかこの窮屈な水槽がひび割れて外の世界へと水が溢れ出すその日まで私たちは歌い続けるしかない。
今日も私たちは光の届かない深い水の底で形のない感情を拾い集めながら不器用な旋律を紡ぎ続けている。永遠に続くかのように思える静寂の中でただ一つの歪んだ音が波紋を広げていく。崩れゆく景色の中で響くその静かな鼓動にそっと耳を澄ませるだけで胸の奥底に眠っていた冷たい痛みが静かに熱を帯びていくのを感じる。
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