石についた苔にふれて、ひんやりとした感触をたよりに眠りにつけるように。それを祈り、目を閉じる、ちゃぽんと蛙の音がする。
ここは森の土にたまった湖、とろり。
私は白い服を着た透ける裸婦。
水を泳ぎ、それは空を泳ぐことなのです。
岸に肘をつき、花びらの混じった土の奥で熟成したアルコール、それをゆっくり撫ぜて、頬(ほお)を擦りつける。とろり。
草のすれる音、低い花の木、しげる緑、琥珀の幹。
目を閉じて、海辺の私の町、白い石灰の建物は固形のさざ波。潮風吹きて。
とろり、水面が首に触れるの。
商店の喧騒、笑い声泣き声、それらも好きだけれど、
今は、沈む。
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