今日は山登り。
ということで朝早く5時に起きる。
といってもヘルフィヨトルにとっては対して早くもないのだが。
顔を洗い着替えて、簡単に調理をする。
てきぱきとそれらを済ませると、今度は朝食を作り始める。
ヘルフィヨトルが手際良くそんなことをやっている間、カンタータクはというと…………
「グ~~。グ~~。グ~~。グ~~」
見事なまでにいびきを立てている。
(毎度ですね)
はあ、とため息一つにヘルフィヨトルがカンタータクを揺すり起こしたのは5時半。
「ん~~~~~~~」
目をこすりながら、ゆっくりとベッドから起きる。
ヘルフィヨトルは机に戻って朝食を食べ始めた。
カンタータクはというと…………
ぼ~としている。
5分後。
カンタータクは急にパッと動きだし、洗面所に向かった。
ちゃっちゃっと終わらせると食卓にやってきた。
家を出たのは6時。
カンタータクの馬車で旅を始めた。
街を抜け、森の中に通された一本の道をひたすらに進む。
9時15分、今日宿に着いた。
だが、まだ宿には入らない。
馬車だけを止める。
これから二人は山登りに行くのだ。
その宿からとぼとぼ10分ほど歩くと乗り場に着いた。
一日で登って降りるのは、下から登っては間に合わない。
だから二人は乗ることにしていた。
乗る?
乗り場?
馬車の時代なのに山登りの時に乗るものなんかあるのか?
え? まさか馬車が主流なのにゴンドラがあるの???
そんな疑問を抱いたかもしれない。
確かに正しい疑問である。
だが、忘れてはいけない。
この世界は確かに馬車が基本で、自動車や鉄道などというようなものは存在ないが、代わりに魔法というものがある。
二人は魔法のゴンドラに乗った。
原理はコーゼンザスと似ている。
風魔法を利用して飛んでいるのだ。
ただ、このゴンドラの場合は実際に魔法使いがその場で風魔法を駆使しているので、コーゼンザスとは違ってはるかに高い宙も飛ぶことができる。
一般の人ももちろん利用でき、二人は満員に近いゴンドラに乗った。
10分ほどで山の中腹ほどまで上がって到着した。
少し遠くに茶色い山が見える。
そこには山から吹き出た煙が立ち込めていた。
ヘルフィヨトル達は歩きだす。
まだ残雪が残る角度の浅い台地を超え、遂に本格的な山道へと差し掛かる。
木一つ生えていない山肌。
理由は土地がやせているということよりも寒い気候による森林限界のほうが正しいだろう。
そんな山をヘルフィヨトルとカンタータクは登り始めた。
しばらくすると硫黄のにおいがしてきた。
ヘルフィヨトルはすぐ横の谷の底を覗く。
そこからはゴーゴーと火山の白い煙が上がっていて、辺りは硫黄と黄色く染まっていた。
「タク! 見てください、すごいですよ!」
そう言ったヘルフィヨトルだったが、一向に返事が返ってこない。
ヘルフィヨトルは何事かと上を見たが、瞬間、大いに驚いた。
返事が返ってくるはずもない。
カンタータクはもうかなり上まで登っていた。
「え……ちょっと待ってください!」
そう言ってももちろんカンタータクには聞こえない。
ヘルフィヨトルは必死に登るしかなかった。
だが、ただの女性並みの体力しかないヘルフィヨトルが日々鍛冶という力仕事をやっているカンタータクに追いつくはずもなかった。
一時間半後。
はぁはぁ、と息を切らせながらヘルフィヨトルはようやく頂上に着く。
一時間半で登ったのは十分にすごいことだが、ヘルフィヨトルは満足できなかった。
周りの風景には目もくれずにそこに立っているタクに向かう。
「お! お疲れ」
「タクのバカ」
そう返事すると、ヘルフィヨトルはカンタータクをポカポカと叩く。
「ど、どうしたんだよ」
驚くカンタータク。
自分のしたことに全く気付いていない。
「タクの鈍感!」
「何か??? まあ、とりあえず風景見ろよ!」
自分が鈍感であることにすら気付かずに
「もう、また話題をそらす!」
そう言ってヘルフィヨトルは膨れたが、風景に焦点を合わせた瞬間、それに言葉を失った。
前にも左右にも山脈が美しく続き、後ろを向けば霧の中に先ほど登ってきた道だけが一本、天空の架け橋のごとく見える。
「きれい」
ヘルフィヨトルは無意識にそう呟いていた。
その風景に心も癒され、疲れも消える。
45分ほど、ヘルフィヨトルはただただその風景を見渡した。
「おーい、そろそろ下りようぜ」
カンタータクはまだ風景を見つめていたヘルフィヨトルを呼んだ。
「あ、はい」
笑顔でそう答えてからさらに一言。
「でも、今回は先に行かないでくださいね!」
「え?」
何のことか分からない、というようにカンタータクは声を漏らした。
「え、じゃないです! 一緒に下りるんです!」
「なんで?」
首をかしげたカンタータクは「あ」と気付いてぽんっと手をたたく。
「一人で下りるのが怖いんだな」
「……ま、まあ、そうだけど……」
ヘルフィヨトルは恥ずかしさで顔を少し赤く染め、目を背ける。
(私、これでもワルキューレなのよね……)
すると、カンタータクがヘルフィヨトルの頭に手をおいて髪をガシガシとやる。
微笑みながら言った。
「大丈夫。誰だってそう言うことがあるよ。恥ずかしいことじゃないさ」
そんなカンタータクにヘルフィヨトルは見惚れた。
そして。
「はい!」
ヘルフィヨトルは満面の笑みで答えたのだった。
コメント10
関連動画0
ご意見・ご感想
ヘルケロ
ご意見・ご感想
ラ、ラブラブですか……?
まあ、ラブラブっぽくはしましたがwww
本当にきれいです
疲れはしましたが、登ってよかったと思っています
そして………………実は最期じゃない><
2009/09/02 17:07:39
ばかぷりんす。
ご意見・ご感想
ラブラブですね~>w<
いいなぁ~ラブラブww
山、山はいいですよね、私も山の上から見る景色は大好きです^^
登るのは大変だけど。
えと、これで最後でいいんですよね?
それでわお疲れ様でした!
私のわがままを聞いてくださって本当にありがとうございました!!
2009/09/02 14:47:14
ヘルケロ
ご意見・ご感想
読んでくれてありがとうございます
楽しんてもらえてよかったです^^
可、可愛いですか?><
お持ち帰りですか?
すいません、もう売り切れで(ぇ
2009/08/24 07:08:51
閉じる
ご意見・ご感想
ヘルフィヨトルさん!読ませていただきましたー!(>ω<)
すごく楽しませてもらいました!
ヘルめちゃくちゃ可愛いス><
お持ち帰りしたいくらいに←
続き待ってます>ワ<)ノ
2009/08/24 05:10:56