ヘルケロ
ピアプロID: rodexia
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(プロフィールに書いてます)
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主にコラボのプロジェクトリーダーや補佐で活動中。
小説復活しました。
主に以下、2シリーズを書いています。
《女画家の〇枚目》
女画家・未久を主人公とした恋愛ファンタジー。
ボカロキャラ達がファンタジー調にデコレートされて登場します。
《旅の調べ》
物書き友達の九条みのりさんの旅の紀行です。
私に比べると、非常に優しいタッチの作品になっています。
【プロフィール】
性別:♀
年齢:誕生日参照
誕生日:1993年8月22日
在住:関東
アイコン:ほのかさん作!(http://piapro.jp/pandatype)
Twitter:https://twitter.com/x_kerohell_x
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最近の投稿作品 (93)
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迷宮都市 ~表現と情景を楽しむ小説~
詩人は、迷宮都市に迷い込んだ。
大通りから外れた路地裏。
両側は民家の壁が連なり、
石畳の道は、永遠に続く。
勇んで、路地裏に入って、
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雪が落ちる
雪はしんしんと降るのが美しいでしょうか。
それとも、ごーごーと吹き荒れるのが素晴らしいでしょうか。
でも、その町では、雪が落ちてくるのです。
大きな断崖に、無数の横穴。その一つ一つが家である。
眼前には平野が広がっているのに、家屋は一軒もない。
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ヘルケロ旅記 日本海の冬2018.12
日本海の冬は、広くて狭い。
雪が絶えず舞っていて、地平線はいつも掻き消されている。景色は離れるにつれて薄らぎ、ついには、白んだ大気に飲まれてしまう。見える範囲はあまりに小さく、想像はあまりに多く膨れる。
列車が駅を発つと、すぐに町並みは途絶え、田んぼが大地を包んだ。
右手に、新しい町が見える。けれども、うっすらと影を覗かせるばかり。全容は分からない。左手を向くと、田畑の中心に、大きな工場が、城のように聳えている。静寂の中にたたずむ姿は、ノイシュバンシュタイン城よりも、よほど幻想的である。
葉も草も沈黙している。動くのは、私が乗る列車ただ一つ。日本海の冬は、美しい。
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女画家の三枚目 風景画のない塔
女画家は筆を踊らせている。
キャンバスは色鮮やかに。
まだ空の色も見ていない。荒々しく描きなぐって半刻。女画家はその腰まで伸びた翡翠の髪を靡かせて振り返った。
「ごめん、お待たせ。一段落ついたから行こう」
「ほんと、未久は描きたくなったら衝動に任せるんだね」
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宵の歌声
青年は納得できずにいた。
なぜ、船長はあの尼を船に乗せたのだろうか。
考えるほどに、憤りが胸を支配する。
船という乗り物は、女である。だから、船首にマリア像を讃えているし、船乗りは男ばかりなのだ。船に女が乗れば、船は嫉妬に燃えて、災難にある。それが、船乗りの常識である。
というのに、船長はなぜあの尼を船に乗せたのだろうか。
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天使は嗤った
天使は嗤った。キャハハ、と甲高く嗤った。天空から地上を見下して、人間の命の短さを嗤った。ラッパを片手に、教会で命の誕生を祝福するふりをして、これから訪れる無残な人生を嗤った。神の横で、人が地獄に堕とされていくのを嗤った。
悪魔は泣いた。めそめそと泣いた。地獄から地上を拝んで、人間がまた一人地獄に送られてくることを泣いた。斧を片手に、来訪者を迎え入れて、これから彼らに訪れる暗い日々を泣いた。死神の横で、人の余生を幸せに出来ないことを泣いた。
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正天の霹靂(せいてんのへきれき)
満天の星空。
という言葉は、陳腐だが美しい。
あなたも私も、その言葉に伴う光景を想像できる。
だが、”満天を超える星空”、という言葉はどうだろうか。あなたは想像できるだろうか。
これから語るのは、それに巡り合う物語。
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生
人の一生は不思議なものだ。生まれた時は明日に希望を燃やしていた。生粋の夢見人だった。だが、やがて、今にしがみ付くことを生業とし始める。生い立ちを嘆き、生憎の平生を耐え忍ぶように過ごし始める。
人は不思議なものだ。生きているのに生きようとしない。芝生が刈り取られて初めて生命であったことを思い出すように、生垣が生え育った葉を切り落とされて初めて生命であったことを思い出すように、自分の大切なものを切り落とされて初めて、生きることを決意する。
愚かだ。実に愚かだ。近代の偉人ジャンジャック・ルソーがそれを「第二の誕生」と呼んでいるように、人のその愚かさは、神に約束された愚かさなのかもしれない。だが、愚かな期間があるからこそ、輝く時期もまたあるのではないか、私はそのように思う。
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旅の調べ ~野辺山・清里~
~~旅初め~~
恋人・たっさんの計画で仕事帰り鎌倉に一泊して今回の旅は始まりました。翌朝、鎌倉から、電車に揺られて四時間半? 延々山の中を走っていたのに、ふと丘に上がったかと思ったら、目の前が突然開けて、眼下に町が広がったのを良く覚えています。それからは早いもので、気づけば長野・野辺山に着いていました。
~~思いの程~~
小説を好きになって15年が経ちます。漫画を好きになって10年が経ちます。知る限りでは、野辺山はアニメの舞台になっていません。けれども、野辺山へと向かう小海線で熟睡すれば、「あの夏で待ってる」の小諸で目を覚まします。小諸からは「サマーウォーズ」の上田が片道20分。のどかな田んぼ風景が思い描かれます。反対に行くと、「マリア様がみてる」の軽井沢。少女漫画は随分楽しみました。ごきげんよう。山百合会の皆様はお元気でしょうか。もしかしたら、彼女らも遠足で野辺山へ? 浮かれた心を胸に、電車を降りたのでした。
~~標高を祝う~~
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霧の宮島
深見謙一が玉塚夏に出会ったのは、一年前のことだった。厳島神社、というよりも牡蠣を堪能しに行った宮島で、夏は売り子をしていた。140cmの小柄な体型。黒い長髪と細い眉。客が来ても愛想笑いさえ浮かべない彼女に、却って興味が湧いた。
宮島の一日はあっという間だった。中国・九州旅行の計画を全て書き換えて、夏の元に通った。けれども、彼女の態度は少しも変わらない。毎日通っているから「また、いらっしゃったのね」なんて言われても可笑しくないのに、夏の悲哀に満ちた表情は張り付いたまま。
最終日の電車が迫って、ダメ元で告白してみると、意外なことに小さな頷きが返ってきた。それからは足繁く宮島に通っている。
ふぅと煙を 吐いて、謙一は床に転がった。
灰皿にタバコを押し潰して、携帯でメールを確認する。新着なし。夏からは滅多に返ってこない。深夜帰りの重労働。疲労で母の料理も喉を通らない。こういうとき程恋人のメールが欲しいのに、と心の中で少しだけ愚痴を零す。
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女画家の二枚目 濃霧の質感
女画家は筆を踊らせている。
キャンバスは色鮮やかに染まっている。
どれほど描き続けていただろうか。東南から照らしていた眩しい朝日は、既に西の空から青天を食べ始めている。
こんなところかな、と一人言を零して女画家は宿に消えていった。そよ風がそっと緑髪を撫でた。
夕食は、山菜のトロトロスープに、粟のパン。
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女画家の一枚目 羽の生える街
女画家は筆を踊らせている。
キャンバスは色鮮やかに染まっている。
「随分うまってるね。そろそろ完成?」
昼上がり。青髪の男が横から彼女の絵を覗く。
「それなりに」
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飛行機旅
飛行機から見る空は不思議。眼下の雲以外には何もない。澄んでいるわけでもない。むしろすこしぼやっとしている。
雲との境目はまるで夜明けのように白んでいる。雲の糸が絡んでいるからかもしれない。グラデーションは綺麗とは少し違う。整っているという表現が近い色の移り。
眼下の雲はまるで生クリーム。厚みがあって、塊になっていて、でも固くない。通り抜ける時の激しい揺れで初めて質量があることを体感する。
遠くの雲はところどころ影を帯びている。ぽこりと膨らんだその先には山脈でもありそうで、けれど一万フィートの上空にはありえない。
雲の切れ間から見える海は青くない。薄い雲の膜があるのかもしれない。ぼんやりとした寒色の中でときどき船の白い筋が走っている。
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【筆調べ】森育ちの雨
苔色のまだら模様を走らせた木々の下で、ポツリポツリと水の音。雨が止んだ頃、思い出したように雨の空。
ポチャリポチャリと出会う音。足元で音なく流れる小川をはずむ音。
ポツと、ポツリと、ポツポツと。あるいは思い出したようにまたポツと。拍子を忘れてじゃれる音。
幹と緑と薄暗さ。風を忘れて水の音。
時にフスッと靴の音。またはチャッとはじく音。
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【筆調べ】戦場の乙女
ボロ布の少女がいた。
ボロ布の少女が立っていた。
憂いの表情を滲ませたボロ布の少女が立っていた。
血染めの地面。転がった腕。
見知らぬ兵士の骸。
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交橋鉱通奇観(こうきょうこうつうきかん)
詩人は67階層目で朝霧草の白澄み紅茶を一口飲んだ。
「イア、ようやく起きたのですか」
呼ばれた瑠璃色瞳の乙女は、静かな足取りでやってきて、それから、ぶんぶんと首を横に振った。膝下まで伸びた淡いベージュ髪は、少女が動くたび、ゆったりと揺れている。
詩人がようやく大穴の入口にたどり着いたのは、一か月も前のこと。ちょうど大雨が降り出した日のことだった。乾季を一目見ておきたかったが叶わなかったようだ。今はもう紅茶の薄まる季節になってしまっている。
「冗談がうまいですね。雷が怖くて、ずっと宿から出られなかったものですから、食事を届けたのを覚えていますよ」