タグ「オリジナル」のついた投稿作品一覧(21)
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雪はしんしんと降るのが美しいでしょうか。
それとも、ごーごーと吹き荒れるのが素晴らしいでしょうか。
でも、その町では、雪が落ちてくるのです。
大きな断崖に、無数の横穴。その一つ一つが家である。
眼前には平野が広がっているのに、家屋は一軒もない。
「どうして?」
洞穴の一つ、木の香りが温か...雪が落ちる
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雪はしんしんと降るのが美しいでしょうか。
それとも、ごーごーと吹き荒れるのが素晴らしいでしょうか。
でも、その町では、雪が落ちてくるのです。
大きな断崖に、無数の横穴。その一つ一つが家である。
眼前には平野が広がっているのに、家屋は一軒もない。
「どうして?」
洞穴の一つ、木の香りが温か...雪が落ちる
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日本海の冬は、広くて狭い。
雪が絶えず舞っていて、地平線はいつも掻き消されている。景色は離れるにつれて薄らぎ、ついには、白んだ大気に飲まれてしまう。見える範囲はあまりに小さく、想像はあまりに多く膨れる。
列車が駅を発つと、すぐに町並みは途絶え、田んぼが大地を包んだ。
右手に、新しい町が見える...ヘルケロ旅記 日本海の冬2018.12
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女画家は筆を踊らせている。
キャンバスは色鮮やかに。
まだ空の色も見ていない。荒々しく描きなぐって半刻。女画家はその腰まで伸びた翡翠の髪を靡かせて振り返った。
「ごめん、お待たせ。一段落ついたから行こう」
「ほんと、未久は描きたくなったら衝動に任せるんだね」
碧髪の冒険家が軽やかに笑った。
...女画家の三枚目 風景画のない塔
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青年は納得できずにいた。
なぜ、船長はあの尼を船に乗せたのだろうか。
考えるほどに、憤りが胸を支配する。
船という乗り物は、女である。だから、船首にマリア像を讃えているし、船乗りは男ばかりなのだ。船に女が乗れば、船は嫉妬に燃えて、災難にある。それが、船乗りの常識である。
というのに、船長は...宵の歌声
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青年は納得できずにいた。
なぜ、船長はあの尼を船に乗せたのだろうか。
考えるほどに、憤りが胸を支配する。
船という乗り物は、女である。だから、船首にマリア像を讃えているし、船乗りは男ばかりなのだ。船に女が乗れば、船は嫉妬に燃えて、災難にある。それが、船乗りの常識である。
というのに、船長は...宵の歌声
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天使は嗤った。キャハハ、と甲高く嗤った。天空から地上を見下して、人間の命の短さを嗤った。ラッパを片手に、教会で命の誕生を祝福するふりをして、これから訪れる無残な人生を嗤った。神の横で、人が地獄に堕とされていくのを嗤った。
悪魔は泣いた。めそめそと泣いた。地獄から地上を拝んで、人間がまた一人地獄に...天使は嗤った
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天使は嗤った。キャハハ、と甲高く嗤った。天空から地上を見下して、人間の命の短さを嗤った。ラッパを片手に、教会で命の誕生を祝福するふりをして、これから訪れる無残な人生を嗤った。神の横で、人が地獄に堕とされていくのを嗤った。
悪魔は泣いた。めそめそと泣いた。地獄から地上を拝んで、人間がまた一人地獄に...天使は嗤った
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満天の星空。
という言葉は、陳腐だが美しい。
あなたも私も、その言葉に伴う光景を想像できる。
だが、”満天を超える星空”、という言葉はどうだろうか。あなたは想像できるだろうか。
これから語るのは、それに巡り合う物語。
場所は、砂漠の中心。
宵闇の中で、焚火の灯だけが温かい。
キャラバ...正天の霹靂(せいてんのへきれき)
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満天の星空。
という言葉は、陳腐だが美しい。
あなたも私も、その言葉に伴う光景を想像できる。
だが、”満天を超える星空”、という言葉はどうだろうか。あなたは想像できるだろうか。
これから語るのは、それに巡り合う物語。
場所は、砂漠の中心。
宵闇の中で、焚火の灯だけが温かい。
キャラバ...正天の霹靂(せいてんのへきれき)
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人の一生は不思議なものだ。生まれた時は明日に希望を燃やしていた。生粋の夢見人だった。だが、やがて、今にしがみ付くことを生業とし始める。生い立ちを嘆き、生憎の平生を耐え忍ぶように過ごし始める。
人は不思議なものだ。生きているのに生きようとしない。芝生が刈り取られて初めて生命であったことを思い出すよ...生
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~~旅初め~~
恋人・たっさんの計画で仕事帰り鎌倉に一泊して今回の旅は始まりました。翌朝、鎌倉から、電車に揺られて四時間半? 延々山の中を走っていたのに、ふと丘に上がったかと思ったら、目の前が突然開けて、眼下に町が広がったのを良く覚えています。それからは早いもので、気づけば長野・野辺山に着いていま...旅の調べ ~野辺山・清里~
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深見謙一が玉塚夏に出会ったのは、一年前のことだった。厳島神社、というよりも牡蠣を堪能しに行った宮島で、夏は売り子をしていた。140cmの小柄な体型。黒い長髪と細い眉。客が来ても愛想笑いさえ浮かべない彼女に、却って興味が湧いた。
宮島の一日はあっという間だった。中国・九州旅行の計画を全て書き換えて...霧の宮島
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飛行機から見る空は不思議。眼下の雲以外には何もない。澄んでいるわけでもない。むしろすこしぼやっとしている。
雲との境目はまるで夜明けのように白んでいる。雲の糸が絡んでいるからかもしれない。グラデーションは綺麗とは少し違う。整っているという表現が近い色の移り。
眼下の雲はまるで生クリーム。厚みが...飛行機旅
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苔色のまだら模様を走らせた木々の下で、ポツリポツリと水の音。雨が止んだ頃、思い出したように雨の空。
ポチャリポチャリと出会う音。足元で音なく流れる小川をはずむ音。
ポツと、ポツリと、ポツポツと。あるいは思い出したようにまたポツと。拍子を忘れてじゃれる音。
幹と緑と薄暗さ。風を忘れて水の音。
...【筆調べ】森育ちの雨
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【タイトル】
夜想列車
【プロローグ】
列車は夜を走った。
ムロランを出発した寝台車は、ヒロサキで僕を乗せてから遥か南西のイブスキまで連れていく。
初めて故郷を離れる僕は、キュウシュウの空を知らない。
「こんにちは。向かいですね。宜しくお願いします」
彼女はそうやって僕に挨拶した。
【テー...夜想列車 【一週間企画(未完 ヘル)】
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「ありがとうございましたー!」
「はぁ……」
溜息ひとつ、俺は自分の財布をしまった。
残高は三千円。月末まではあと十日。本来ならばこれでも十分すぎるのだが、初音ミクが我が家に来てからは、いくらあっても足りない生活を強いられている。これほどの我儘の塊に、俺は今まで出会ったことがない。
当の張本人...No.4 金欠【ボカファ】
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冷房の中で雷の音を聞いた。
不意に窓を開けて、外を見た。
青い空の向こうから灰色の雲が近づいていた。
光って鳴り続ける雷の下で、霧のような雨が降り出した。
視界を消していく。いつも見えている景色が薄れていく。
不意に風が吹いた。
ふわりと体を通り抜けたその風は、蒸し暑いそれでは無く、涼...あの頃に別れを
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※No.1二人生活の始まり を読んでないと分かりづらい内容になっています。
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初音ミクという名のロボットが高島隼人の家に転がり込んだ日の夜七時。
食材が無いことに気付き、ミクの布団や一文無しで来た彼女の着替えなども必要なので、彼等は少し遠くのショ...No.3自転車【ボカファ】
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※No.1二人生活の始まり を読んでないと分かりづらい内容になっています。
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緑ツインテールの女性が俺の家に突然転がり込むという事件が起きてから十五分。俺はまだ状況を呑み込めないまま、自分の家にいた。
彼女はというと、家の中を物珍しそうにあち...No.2昼食【ボカファ】
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都市の音楽大学に入って二年。一人生活でバイトをしながら俺は自分の作品を送り、とある応募の最優秀賞を取った。実のところ手当たり次第に応募した中の一つだったこともあって景品の内容を全く知らなかったので、後日自宅に彼女が届いたのは不思議だった。
「はい、どちら様でしょうか?」
戸を開けるとスーツ姿の男...No.1二人生活の始まり 【ボカファ】