日本海の冬は、広くて狭い。
 雪が絶えず舞っていて、地平線はいつも掻き消されている。景色は離れるにつれて薄らぎ、ついには、白んだ大気に飲まれてしまう。見える範囲はあまりに小さく、想像はあまりに多く膨れる。
 列車が駅を発つと、すぐに町並みは途絶え、田んぼが大地を包んだ。
 右手に、新しい町が見える。けれども、うっすらと影を覗かせるばかり。全容は分からない。左手を向くと、田畑の中心に、大きな工場が、城のように聳えている。静寂の中にたたずむ姿は、ノイシュバンシュタイン城よりも、よほど幻想的である。
 葉も草も沈黙している。動くのは、私が乗る列車ただ一つ。日本海の冬は、美しい。

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ヘルケロ旅記 日本海の冬2018.12

旅の筆遊び。

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投稿日:2019/01/01 12:56:46

文字数:290文字

カテゴリ:小説

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