ATTENTION

※これは悪ノPことmothyさんの新曲「ヴェノマニア公の狂気」に魅了されてしまった作者による突発捏造小説です。
捏造の上に原曲の素晴らしい雰囲気を損なってしまっています。
原曲未視聴の方、「捏造なんて許せない!」という原曲ファンの方は読まない方が良いかもです。
「何が来ても大丈夫!」という心の広い方のみお進み下さい。



それでは、どうぞ――。




 満たされない…

 女の柔肌に舌を這わせながら、ヴェノマニア公と呼ばれる男はぼんやりとそう感じていた。
 だがそれはまだ無意識の領域を出ない程度の感情であり、大した違和感も感じる事なく、欲望に任せた彼の行為は続く。

 今抱いてる女の名前は、忘れてしまった。
 確か元々は何処かの修道女だった。神に捧げる純潔とやらはどこへやら…
 まあそれも仕方ない。
 女の喘ぎを聞きながら公爵はほくそ笑む。
 僕に堕ちない女など、いやしないのだから…

 ヴェノマニアの言葉は決して自惚れ等ではない。
 事実、この男には女を魅了してやまぬ不思議な力があった。
 その蠱惑的な瞳に見つめられた女は皆魅了され、堕ちていく。
 悪魔に魅入られたような美しさだ――彼の虜となる娘たちを見て、国の男たちは陰でそう噂した。
 事実この女もそうだった。
 彼が城下を散歩して屋敷へ帰ってくると、恐らく後を追ってきたのだろう、すぐにこの女が訪ねてき、玄関で修道服を脱ぎ捨てた。
 その潔さを気に入られ、彼女は迎え入れられる事となった。
 彼の屋敷の地下室に広がる、狂気のハーレムに……

 カムイ=G=ヴェノマニア公爵の裏の顔。
 それは悪魔と契った色欲魔。城下の噂は図らずしも真実に近かった。
 魔を宿したその瞳は国中の女を惑わし、彼は気に入った女を地下室へ閉じ込める。
 その為巷では連続女性失踪事件が話題になっていたが、彼と事件を結び付ける証拠は何一つあがっていなかった。


 修道女だった女の部屋を出、ヴェノマニアは緩慢な足取りで自室へ戻る。
 部屋に入ると、彼のベッド脇に座り込んでいた女が振り返った。
 彼の紫の髪とよく映える美しい緑の髪。力強い光を持つ大きな瞳。
 「グミナ、起きていたのか。」
 乱れた髪を手櫛で掻き上げながらヴェノマニアは何でもない事のように尋ねる。
 彼女は彼の部屋へ自由に出入りする事を許された唯一の存在、グミナ=グラスレッド。
 彼の幼馴染みで今では愛妾の一人だった。
 「待っていたのよ…ずっとね。」
 髪と同じ鮮やかな緑に染まった自らの爪を見つめながら、グミナも特に気にすることなく答える。
 彼女も含め、この屋敷にいる女達は皆彼の瞳に捕らわれた囚人。
 彼を愛しこそすれ、彼に怒りや反感を覚える事などない。

 今は夜明けの刻であり、カーテンごしに白んだ光が射し込み始めている。
 その光がグミナのうっすらと隈の浮かんだ顔を照らしていた。

 ガッ

 おもむろに、ヴェノマニアがグミナの髪を掴む。
 そのまま彼女の顎を持ち上げ顔を覗き込む。
 「隈が出来ている。寝ろ」
 そこでぱっと手を放すと、反動でグミナは尻餅をつく。
 座り直すグミナを見下ろしヴェノマニアは言う。
 「どんな事があってもその顔は美しいままでいろと言ったと思ったけどな。」
 「…そうだったわね、帰って寝るわ。おやすみなさい。」
 そうして立ち上がりナイトドレスの裾を払うグミナの腕を引き抱き寄せる。
 彼女の華奢な身体は素直に腕の中に収まり、そのまま深く口付けられる。
 「んっ…」
 腕の中で小さく震えたグミナからそっと唇を放すと、銀糸を舌で絡めとる。
 「いや、ここで寝ろ。私も今から眠る。」

 ヴェノマニアの言葉にグミナはにっこり笑んだ。




 見慣れた屋敷の庭でヴェノマニアは蹲っていた。
 子供の高い声が辺りに充満し、目眩がする。

 一際甲高い少女の声が叫ぶ。
 「あんたみたいな不細工と結婚させられる婦人は可哀想ね!そう思わない?グミナ」

 呼ばれた名前にヴェノマニアはビクッと身を震わせ恐る恐る顔をあげる。
 その視界に綺麗な緑の髪の少女が入った。
 自慢の髪を指に巻き付けて弄りながら、その大きな瞳が悪戯っぽく光る。

 「そうね、カムイと結婚するとなったら…」

 そこで少女はヴェノマニアの目を見てクスリと笑う。

 「私だったら死んじゃうな。」


 「うわぁあああ!!」


 過去の自分の悲痛な叫びにヴェノマニアは飛び起きた。陽は既に高く昇り、カーテンの隙間から強い日差しが射し込んでいる。
 彼は震える手でそっと顔を撫でた。
 大丈夫だ、今の僕はあの頃とは違う――。

 忘れた筈の過去の醜い自分。
 幼い頃の屈辱を晴らす為に悪魔とまで契りを交わし、今の容姿と生活を手に入れ生まれ変わったと言うのに…

 やはり一緒に眠らない方が良かったのか……
 傍らで眠る幼馴染みに視線を落とす。
 安らかに寝息をたてている事に安堵して、その髪を撫でそっと額に口付ける。
 その仕草に、明け方の乱暴さの面影はない。

 略装に着替えると眠る娘をそのままに、ヴェノマニアは部屋を出た。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

ヴェノマニア公の狂気ー1

初めまして、ピアプロには初投稿となります。
「ヴェノマニア公の狂気」をループしすぎてパァアアンってなった日に書いた突発小説。
もう1年以上前の作品になるんですね…(しみじみ

閲覧数:568

投稿日:2011/09/07 23:57:55

文字数:2,145文字

カテゴリ:小説

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