花が咲いた
見たこともない花が咲いた
色も匂いもない
形はある
だけど名前もない
本にも載ってない
自分で名前をつけることにした
可愛い名前にしてあげた
名前が付いた花は言う
「そっとしといてくれないか?」
どこからともなく花は言う
飽きれた私は花を踏む
せっかく名前をやったのに
お前のためにやったのに
踏んだ後に気づいたんだ
私にしか見えない花だということ
私以外には誰にも見えない
見えても興味を持たれない
可愛そうだとおもわないか?
踏んだ本人は弁議をはかる
花はもうしゃべらない
翌日彼に水をやった
元気になることをひたすら祈り
花は萎れた顔で言う
「私は誰にも見られない」
無言で彼に水をやる
似たもの同士で庇い合う
少し経って花は笑う
元気な顔して大声で
その花には色があった
匂いもほのかに甘酸っぱい
本にも名前は載っていた
綺麗な名前で載っていた
花は今日も愉快に舞う
誰かと居る楽しさを
今一瞬を楽しむために
水をやった彼も笑う
花に表情があるように
彼の顔にも花が咲く
誰かに気づかれる嬉しさを
誰かに憎まれる悲しさを
誰かに疎まれる悔しさを
誰かに愛される喜びを
知った花は今日も笑う
心を持って今日も笑う
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