ずっと君が好きだった。
きっとこれからも好きだろう。

笑顔が似合うツインテールの君に。


<神様、ありがとう>


「マスター、私を動かしてくれないの?」

パソコンの中の君の声が聞こえる

少し飲みすぎてアルコールが十分それ以上に回りすぎた頭に響く音はまるでノイズみたいだった。

少しいらついて強制シャットダウン。

ぐらついた日々だった。
君一つで一気に僕の価値は不似合いな場所にまで持ち上げられた。
嬉しくてたくさん曲を書いた。
たくさんの旋律を君に歌ってもらった。
君は「素敵な曲だね!」って文句ひとつ言わず笑顔で歌ってくれた。
僕の曲、歌う君の声はたくさんの人に聞いてもらえた。
それでもやっぱりランキングの一番上は、動画を横切って流れるネ申なんて言葉はなんだか現実の僕と釣り合っていなくて、本物の情けない疼くまった僕と曲を作る僕が離れていくみたいで。

俺がやった。
ミクとやった。
この楽曲を二人で作り上げた。

確かにそのはずなんだけど、なんとなくいつからか画面越しの過大な喝采が他人事みたいで。
俺はそんなんじゃない。
もちろん喝采が大きくなるに比例して大きくなる影もわかる。
それ以上にずれていく感覚がとにかく苦しかった。

俺は。
その先を考えたくなくて酒を煽っては溜まっていく空き缶に埋もれる。
その度また俺は情けなくなる。
実に嫌なループだ。

……最後に曲を書いたのは。

何時だったか。1年くらい前か。
再生数に走ってしまった自分が居た。
気付いてすごく嫌だった。ミクの魅力を自分なりに引き出した楽曲より彼女は少しキツそうな顔をしていて、でも「素敵な曲だね」っていつも通り笑った。
再生数に走ったのも、彼女のことを考えずに曲を書いたのも嫌だった。
こんな俺がこれから先こうやって歪んでしまうとして。
怖かった。
これで終わりにするって言った。
でも君は消せなかった。

消せるわけなかった。

パソコンを開く度鬱陶しい君の声はミュートする決意も出来ず。

出来るわけがない。君が、君の声が大好きだから。

久々にLINEをチェックする。
当時仲良くなった同志からのLINEだ。

[最近既読つかないけどお前何かあったのか!?]
[俺のミクは相変わらず可愛いぞ!見ろ!]
[▲▲が動画を送信しました]
[もうミクは……なんて無いよな!?]
[お前からも嫁自慢届くの待ってるぜ。単刀直入に言うとお前がいないと寂しいんだよ。お前のところのミクも好きだぜ。一番は俺だけど]

……あいつ相変わらずやべえな。
まあ一番は俺のとこのミクに決まってるけど。

まだ自然と張り合い文句が出てくる位には彼女のことが飽きもせず好きだ。

好きだからこそ落胆させたく無いんだ。

何時ものようにネットサーフィンを始める。
すると有名Pが復活したらしいと知る。
どうやら初音は今年の8/31に10周年の誕生日を迎えるらしい。
そのイラストにはちゃんとミクの姿があった。
ミクだ。
離れたかったはずだけどイヤホンを取った。

『心残り残さないように』

その日からひっきりなしにしばらく動画をあげていなかった人達が動画を上げ始めた。
次々とかつて自分と競った仲間も追随するように動画をあげていく。
ランキングを見て驚いた。ミクのサムネイルの動画がたくさんあった。
まるであの時みたいだ。

……そこに俺の曲は無い。

悔しい。
俺だってもっとミクのことを輝かせてやれる。
あの時よりも君のことはよく知っているから。

急いでギターと鍵盤を手に取りパソコンを開く。

「マスター?どうし……」

「また歌ってくれるか、ミク」

「……もちろん!」








8/31 23:59

『遅くなってごめん、誕生日おめでとう』

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【ミク誕】神様、ありがとう

お久しぶりです。

大好きな大好きなボカロPさんの対談インタビュー見てたらどうしても書きたくなってしまって書きました。
その対談読んだ方なら「あっこれあのボカロPさんの対談ネタ使ってる」みたいなの分かってしまうと思う……
あくまでもこれフィクションです 創造やで
でもきっとこんな感じの人いるんじゃないかな。

初音さんお誕生日おめでとうございます!

閲覧数:217

投稿日:2017/08/31 16:52:23

文字数:1,572文字

カテゴリ:小説

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