1.オンラインRPG その3



 ようやく度重なる尋問から開放された私の分身MASATOはどこかの町の中に立っていた。いったい何だろうか、これは。
 小さいころレンや近所の友達と一緒に普通のテレビゲームをやったことはある。だれもが知っている有名なRPGゲームもその時やっていた。ただ実際のところ私はレン達がやっているのを横で見ていただけだ。
 そのゲームの内容は分かりやすいもので平和を取り戻すために敵を倒していき、最後に親玉を倒せばめでたく終わりといったものだ。しかし、今目の前にあるこのオンラインRPGゲームは何というか突然始まった感じでこれから何をしていけばいいのかよく分からない。ただ突っ立っている自分の周りをあわただしくたくさんの人が駆け巡っている。
 
 「とりあえずチュートリアルからやってみようぜ。」

 私はレンが指示する場所へ向かって行った。

 「結構長いんだよな、でもちゃんとやっとけよ。」

 レンはそう言うと自分のパソコンに戻った。
 そのチュートリアルでは町での行動の操作、各画面の機能と使い方、戦闘での操作方法等を親切に説明してくれている。正直見ているだけで疲れてきた。30分くらい見ていたのだろう、でももっと長く感じる。レンは一日中これをやっているのかと思うとどこにそんな精神力があるのだろう、他に使えよ、その時間とエネルギーと言いたくなってしまう。
 苦痛を感じつつレンを見るとゲームをしている彼の目は真剣そのものである。
 
 「レン君、説明終わったみたいだよ。」
 
 そろそろ自分の部屋に戻ろうかなと思いながら私は言った。
 
 「よーし、いよいよそれじゃ実戦に出てみようか。」
 
 まだ何かやるらしい、私は嫌とは言えずレンの指示通りの場所へ向かった。それにまだまだレンが夢中になる理由がよく分かったわけではない。もう少しやってみようと思った。
 さっき見ていた画面とは変わりプレイヤーから見る視点が目まぐるしく移り変わっている。バシューン、バシューン、ドカーンとそんな効果音が鳴り響く中で私の分身MASATOは怪物と戦っている。レンが言うにはこの辺りにいる怪物は雑魚ばかりで先に進むとこんなにラクに倒せるわけではないらしい。
 戦闘が終わるたびに何かを手に入れている。何となくそのへんは分かる。昔見ていたRPGゲームと似たようなもので、経験値とアイテムを手に入れているようだ。でも、それが何の役にたつのかさっぱり分からない。一つ一つレンに聞いていくと彼はすべて答えてくれる。
 私は少し慣れてきたのか、攻撃の仕方、魔法やアイテムを使うタイミングが分かってくるようになった。そうしていくうちに、次々に装備や魔法、アイテムが増えていった。鎧を変えるとMASATOの見た目も変わった。戦闘での武器もちゃんと変えたものに絵が変わっていて、新しく覚えた魔法はさっきとは違う演出をしていた。細かいんだなー。私はそう関心しながらゲームを進め、いつの間にか次はこのアイテムが手に入るといいなと思いながらやるようになっていた。
 次から次へと新しい疑問が出てくる中、レンは私の質問にすべて答えてくれた。何でも知っているのだろうか、正直すごいなと思ってしまった。しかし、レンが言うには彼程度の知識は普通で全然すごくないらしい。本当にすごい人の知識はこんなものではないと彼は言う。そしてその人はいったいどんな人なのかと私は聞いた。
 
 「俺の入っているギルドのマスターだよ。セシルさんって名前の人。」
 
 ギルド・・・?マスター?私にとっては聞きなれない言葉だ。しかし、これから私はこのギルドというものに、そこにいる人達と深く関わっていくことになるのである。
 
 「リン、もう少しこのゲームの基本的なこと覚えて、もうちょっとレベル上げたらさー、俺のいるギルドにつれてってやるよ。みんなに紹介してやる。」
 
 はっと、我に返るようにして私は部屋にある時計を見た。もうこんなに時間が過ぎている。少し驚いてしまった。やらないといけないことがたくさんあるのに。
 
 「レン君、そろそろ終わりにするね。学校の宿題があるんだ。」
 「おう、じゃぁまた明日教えてやるな。明日はもっといい武器が手に入るぜ。」
 
 また明日このゲームをやることになるのか・・・私は何をしているのだろうと思いつつも少しこのゲームに興味が出ていた。それにさっきレンが話していたギルドというものが気になる。せめてそれが何かだけ知ってからやめることにしよう。私は最後に終了の仕方をレンに教わりノートパソコンの電源を消した。



2、夜の新宿 その1へ続く

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ネットゲームで出会った人達  1 オンラインRPG その3

前のバージョンがありますが、誤字を直す前のものでただの消し忘れです。
見る必要はありません。

閲覧数:87

投稿日:2010/10/16 14:40:44

文字数:1,927文字

カテゴリ:小説

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