【05 23:52:10】
レコーディング・キューブ。
名前だけは知っていても、それを知るのは僅か数名だというカゲロウ計画の中心にあるエンジン的存在。
「……ということはこれを破壊すれば……!」
「とはいえ、どうやって破壊する? キューブの存在は知っていてもそれの解析は不可能に近いぞ?」
「簡単なことだ」
その言葉に、キドは暗闇と化している部屋の奥を見詰めた。
そしてそこからやってきたのは……
「コノハ……?!」
「いやいや違うさ。コノハくんとはちょっとばかり能力が被ってるけどね」
そこに居たのはコノハと瓜二つ――正確にはコノハは白髪なのに対し、黒い髪だ――の少年だった。
「はじめまして。僕こそが本物のカゲロウさ。……そしてあっちに居るのが裏切り者のカゲロウ。貴重な実験体データを電子の海へと解き放った、ね」
【06 past day】
コノハがカゲロウとして箱庭で活動していた、ある日の事だ。
「artificial enemy……?」
「人造エネミー、ともいう」
黒のカゲロウ……名前は確か黒羽という、彼によって紹介されたものは電子の世界に広がるデータだった。
「元々は俺達と同じ人間として生きていた。だが、箱庭実験から逃げ切ったらしい。なんとも凄い、ってわけで白衣の科学者さんたちは研究してるわけなんだけどね。ぶっちゃけ何が何やら解らんよ」
「……へぇ、よろしくねエネ」
「もう名前付けてやがる……。まぁいいか」
黒羽は髪を掻きながらゆっくりと部屋を後にした。
【07 past day】
その後エネの管理は正式にコノハに決定され、コノハは毎日エネの部屋に行き来するようになった。
最初は「元気?」「……」といった感じでキャッチボールが失敗していたが、今に至っては少しづつだが会話を交わすようには出来てきた。
しかし、エネと仲良くなり心に何か痼が出来たようにも覚えた。これは病気? それとも別の物? コノハは日に日にその感情を増していった。
そして、コノハはついにエネにその言葉を告げた。
「……そういえばさ、君のことどっかで見たことある気がするんだよね」
「……ゲーム」
「え?」
「あの日はゲームを作っていた。確か最後のテスターで……次の日起きたらラジオが……」
ラジオ。ゲーム。テスター。
このどれもは知らない人間にとっては只の単語だと思うに違いない。
しかし、コノハは違った。
何かが思い出せそうな……頭の中に……絵が好きでいつも絵を描いていた……ゲームを作ろうと誰かが言っていた……。
ダレガ?
誰なんだ……確か女の子で……いつも遅刻なんてしない、ヘッドフォンがトレードマークの……
『榎本貴音』
「……っ!!」
その単語を思いついたのは本当に偶然だった。
しかしコノハに閉じ込められたデータを掘り起こすには、いい切札だった。
そして彼は――彼女が誰なのかを思い出した。
カゲロウプロジェクト 33話【二次創作】
最終章いよいよ中盤だったり。
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