余りにも自然になって気付かない事があった。

「そのペンダントって何でいつも付けてるの?」
「え?」

銀色の月と暁色の猫の大きなペンダント。

「何と無く気になって。」
「さぁ…ちっちゃい頃から気付いたら付けてたからなぁ。」

大切な物…そんな気がしてた。

「綺麗だよね、ちょっと見ても良い?」
「うん。」

何時から持っていたのか覚えていない。本当に気付いたら持っていた。誰にも渡してはいけない気がしてた。

「あれ?これって…ロケット?」
「ロケット?」
「うん、小っちゃい入れ物になっててね、中に写真とか入る様に出来てるの。」
「ふーん。何か入ってた?」
「待って、今開けて…ん?手紙…?」

小さく折り畳まれた紙切れだった。少し色褪せて擦れた文字を何とか読み取った。


『例え世界が変わっても、例え全てを失くしても、あの時計台で君を待つ』


「…誰かへのラブレター?」
「いや、これがそのロケットってのだって初めて知ったし…それにこれ俺の字じゃない。」
「前の持ち主の物とか?」
「どうでも良いよ、元通りにして閉まっとこう。」

古ぼけた手紙、と言うかメモを又小さく折り畳んでペンダントに仕舞った。

「時計台ってどこの時計台かな?」
「さぁ…。」
「ほら、駅前の時計台だって有名じゃない?映画化された『カナリア』って小説の
 ラストシーンの撮影場所だったし。」
「女ってそう言うの好きだよな。」
「良いじゃない、好きでも。」

少し赤く染まった頬にそっと手を当てると、面白い位益々赤くなった。

「退院したらデートしない?」
「ふぇっ?!」
「そう言うの好きなんだろ?芽結は。」

芽結は慌てながら、言葉に出さずにこくこくと頷いていた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コトダマシ-56.ペンダント-

ロケット…解るかな…?

閲覧数:116

投稿日:2010/11/21 19:16:08

文字数:727文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました