いつもよりふかふかの感触に包まれながらまどろんでいた。正直昨日は中々寝付けなかった。夜中にうなされる声で目が覚めて、起こそうとしたらいきなり強い力で押さえ付けられて…。

『行かないで…。』

顔がカッと熱くなった。寝ぼけてたとは言えあんな事されたのも言われたのも初めてだったから。

『流船君が眠れるまで此処に居る。』

うぅ…何であんな事言っちゃったんだろ…。でも流船君凄く苦しそうだったし…放って置けなかったんだよね…。

「ん~…。」
「わわっ?!ちょっ…流船く…!」
「…後五分…。」

もしかして…もしかしなくても、抱き枕代わりにされてる?ぬいぐるみでも抱っこさせてみようかな?流船君可愛いし違和感なさそう…わ…近くで見ると睫毛長~い…。

「ん?」

ふっと目の前に影が落ちて振り返った。

「お早うございます。」
「…ひゃあっ?!」
「初めまして、流船の兄の頼流と申します。危ないからちょっと退いててくれるかな?
 お嬢ちゃん。」
「は、はい…!」

びっくりした…って、流船君のお兄さん?そう言えば似てるかも…何時入って来たんだろう?全然気付かなかった。

「起きろ馬鹿流船―――!!」
「痛ってぇ?!」
「事情があったのは認める、いきなりこんなホテルで思わぬ休息が取れて俺も助かった、
 だがな流船…。」
「あの…。」
「心配したのに女連れ込んでるとはどう言う了見だゴラァ!!」
「痛い痛い痛い痛い!」

目の前で何やらバイオレンスな光景が繰り広げられているのを暫くの間呆然と見ていた。

「君!」
「はっはい!」
「確かに流船は見た目女の子に間違えられる位可愛いかも知れない、だけどどんなに外見が
 可愛かろうと流船は男だ。判るかな?所詮中身は飢えたケダモノ同然の健全な16歳男子
 なんだよ、つまり君はね、数日間餌を食べてない猛獣の檻にノコノコ入って行った
 美味しそうな子羊!この場合子羊がどうなるかなんて直ぐに想像付くだろ?」

満面の笑みで言われると逆に恐いんですけど!何と言うか極端なお兄さんかも…。

「何もしてないよ!人聞きの悪い!」
「信用出来るか!」
「いえ、あの、本当に大丈夫で…。」

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コトダマシ-21.満面の笑みで言われると-

兄ぃは笑顔でキレる

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投稿日:2010/10/17 09:24:47

文字数:913文字

カテゴリ:小説

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