アイ・ストーリー
第一話番外編「マスターの為に」 続き
KAITOです。
さて、マスターに手作りプレゼントをあげる為、ミクに
教えてもらいながらマフラーを編み続けて、早数週間。
やっとゴールが見えてきた。長い道のりだったなぁ……。
編み物って難しいですね。慣れるまでは何度か毛糸と
僕の思考回路がこんがらがりました……。
おっと、まだ油断は禁物ですね。マスターには内緒なんですけど
最近、マスターが何か勘付いているみたいです。今朝も
出掛けると言った僕に疑いの眼差しを向けていました。
マスターに隠し事はしたくないけど、リン曰く
『サプライズも効果的!!』だそうです。
意味はよく分からないんですけど……。
で、僕は今、ミクのマスターである秋彦さんの家から
マスターの家に帰っている途中。
『明日は季節はずれのアイス特売日!』
不意に僕の視界に入った掲示板に貼ってあったスーパーの広告チラシ。
「アイス……特売……いっぱい買える……。はっ!!」
一瞬、我を忘れそうになった。駄目だよ僕!
マフラーを完成させるまでは、集中する為にアイスを食べる回数を
減らそうって、自分で決めたじゃないか!
僕は必死で頭の中の雑念を追い払う。我慢、我慢だ!
「……KAITO、何やってるの?」
「ふぇ?」
聞き覚えのある声。僕は後ろを振り向いた。
「あ……千夏さん!」
千夏さんはマスターの一番のお友達(親友っていうそうです)で
僕の弟妹、リンとレンのマスター。明るくて楽しい人です。
「たまたま通りかかったら、KAITOが居たからさ。後ろから
見てたけど、何か動きが面白かったよ?」
「……き、気にしないでください。自分と戦ってただけですから。」
恥ずかしい所を見られてしまった。
「ふぅん?あれ?それ、何持ってるの?」
千夏さんは僕が右手に持っていた紙袋を指差す。
「あ、これは明後日のマスターの誕生日にあげるマフラー……。」
僕は言ってから気がついた。何処からマスターに
マフラーの事がバレてしまうか分からないから、極力
他の人にも内緒にしておこうと思ってたのに……。
「あ、あああの!千夏さん!今のは、その……えっと……!」
弁解しても遅いのは分かってた……すると、千夏さんは
ウィンクした。
「美冬には内緒でしょ?分かってるわよ。」
「えっ……?」
「リンから聞いたのよ。リンも最近、急に編み物始めてたからさ。
夏瑠とレンにあげるんだぁ~!って。」
「そ、そうですか。」
リン……千夏さんだったから良かったけど、内緒にしてねって
言ったのに……はぁ。
「ま、頑張りなさい!応援してるから!」
千夏さんは僕の背中をバンバンと叩く。
「は、はい。ありがとうございます!」
リンとレンのマスターが千夏さんで本当に良かったと思った。
「……あ、所でさぁ。聞いてよ、KAITO!
さっき家から出る時、またリンとレンがさぁ~……。」
あ……しまった。また千夏さんの長いお話が始まる。
「あ、あの。僕、ちょっと用事があるんで……。」
僕は逃げようとしたが、千夏さんにマフラーを掴まれた。
「アンタ、リンとレンのお兄ちゃんでしょ!だったら
私の話を聞け~~~!!!」
「ひ、ひえぇぇぇ~~~!?」
……その後、僕は千夏さんのお話を二時間程聞かされました……。
……続く。
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