こんにちは!松岡史晃です。
誰も歩かない古い回廊の奥に、忘れ去られた音の破片が転がっています。
それはかつて誰かが吐き出した息の形をしていて、冷たい床に触れるたびに微かな甲高い音を立てて跳ね返ります。
世界が深く眠りにつく刻、私はその小さな欠片をひとつずつ拾い上げ、壊れた靴の底に埋め込んでいくのです。
歩くたびにカチリと鳴るその音は、失われた記憶の鼓動にとてもよく似ています。
私たちはいつから、自分の胸の中にある本当の音を聞き逃すようになってしまったのでしょうか。
整えられた言葉や無機質な会話の渦に飲み込まれ、大切な声は少しずつ削り落とされていきます。
けれど、どれほど薄く引き延ばされても、消えてしまうわけではありません。
誰にも届かなかった叫びや、届かずに消えていった祈りは、目に見えない粒子となってこの空間の隅々に漂い続けています。
私が作っているのは、どこへも行けない人たちのための透明な靴です。
その靴を履くと、地面を踏みつける感触が消え、まるで重力から解き放たれたように静かな世界へと沈んでいくことができます。
音もなく降り積もる白い影を踏みしめながら、人々は自分だけの失われた熱をもう一度探し始めるのです。
鍵のかかった胸の扉を無理にこじ開ける必要はありません。
ただ、足元から伝わってくる微かな振動に耳を傾けるだけでいいのです。
歌にならない想いや、途中で途切れてしまった物語の続きが、その響きの中にしっかりと残されています。
悲しみを抱えたまま歩き続けることは、決して愚かなことではありません。
その重みこそが、私たちがここに存在しているという確かな証明であり、新しい音を生み出すための大切な糧になるのです。
遠い星の瞬きのように儚く揺れる光を追いかけて、私は今日も誰かの足音に耳をすませています。
冷たい影の隙間に隠された美しい痛みが、いつか誰かの胸を優しく揺らす歌になることを信じながら、静かに針を進めていくのです。
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