大分時間が経ったが、どの武器を持ってもさっぱり反応が無かった。最初はあれこれと試していた幾徒も首をひねっている。

「間違いだったんじゃないですか?」
「そんな事は無い筈なんだけどな。実際お前は『文字化け』の字は見えるし『言魂』を
 撃っても正気だし。うーん…あ、もしかして…こいつか?」
「あれ?もう一つあったんだ?」
「最初に作ったプロトタイプなんだけど、こっちのに比べて性能が落ちるんだよ。」
「ふーん。」

試作型なんて大概しょぼい物だろう、なんて考えながら銃を手に取ると、急に反応が変わった。氷の様な、金属の様な質感なのに…脈打つ様に、熱を帯びて、一瞬強く光った。

「うわっ?!」
「お、反応アリ。どうやらお前の武器はこれだな。ちょっと待ってろ、効果範囲とか
 分析するから。」
「…何かこれ生きてるみたいだな。」
「ロマンチストだな。だけど強ち間違ってないぞ?その武器は人を選ぶ。思考、細胞、
 体質、呼吸、記憶、全ての信号から適合者を『呼ぶ』つまり…お前は呼ばれたんだよ
 その武器…「Serpentaurius」にな。」
「……………………。」

熱を帯びてうっすらと光る銃を見詰めた。氷の様な、あるいはバーナーの火の様な、透き通る青。

『逃げて…。』

空耳…では無かった。声に目を見開き顔を上げて、辺りを見回した。この声、この感じ…忘れない…。

「解析終わったぞ、使い方とかはもう覚えて…どうした…?」

『逃げて…逃げて…逃げて…!』

前は夢だと思った。幽霊だと思ったから恐怖で一杯だった。だけど今は恐怖が無かった。

「幾徒!直ぐ此処から出ろ!」
「え?」
「早く!」

叫ぶのとほぼ同時に窓ガラスが砕け散って白い煙で視界が真っ白になった。この匂い…消火器?!足音と共に数人の影が入ったのが判った。咳き込みながら何とか立ち上がる。

「がはっ…?!」
「幾徒?!」
「こいつだな、よし、収容しろ。回収はまだか?」
「一つ足りませんね、12個あると聞いてますが…。」
「女が持ってる筈だ。直ぐに探せ!」

何…何なんだよ…?明らかに軍隊みたいな奴等…あの銃を狙って…それに幾徒が…よく判らないけど絶対まずいだろ、これ…!

「…コトダマ…。」
「おい!このガキ…!」
「『蕕音流船』『敵影排除』『身体強化』『闇月幾徒』『人命救助』『武器奪還』ロード…。」
「装填前に取り押さえろ!あの武器ごと回収だ!」

『装填完了』

恐怖は無い。大丈夫…不思議な確信があった。幾徒を、芽結を…そしてこの声を信じる。こめかみに銃口を当て目の前をしっかりと見て、俺は引き金を引いた。

「アクセス!」

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コトダマシ-13.お前は呼ばれたんだよ-

こめかみは雰囲気だ

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投稿日:2010/10/16 01:54:42

文字数:1,107文字

カテゴリ:小説

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