新宿駅西口地下道
64歳になった元会社員の佐藤泰三は、今日も新宿駅西口地下道を歩いていた。定年退職してから5年、泰三は毎日のようにこの地下道を歩き、行きつけの喫茶店でモーニングコーヒーを飲むのが日課だった。
地下道はいつも人でごった返している。サラリーマン、学生、観光客、様々な人々が行き交い、泰三はそんな光景をただ眺めるのが好きだった。
今日もいつものように地下道を歩いていると、泰三は一人の少女を見かけた。10代後半だろうか、少女はうつむき加減で歩いている。どこか暗い表情をしていて、何か悩み事でも抱えているようだった。
泰三は少女に声をかけたくなった。しかし、64歳という年齢もあって、声をかけようかどうか躊躇してしまう。
そんな泰三の背後から、一人の青年が現れた。青年は少女に声をかけ、二人は笑顔で言葉を交わし始めた。
泰三は青年と少女のやり取りを静かに見守っていた。そして、自分もかつて若かった頃のことを思い出した。
若い頃は、自分も少女のように悩み、迷い、そして希望に満ちていた。しかし、歳を重ねるにつれて、そういった感情が薄れていってしまったような気がする。
泰三は少女と青年の姿を見つめながら、こう思った。
「自分ももう少し若かったら、あの少女に声をかけたかもしれない。」
そして、泰三は決意した。
「これからも、この地下道で様々な人々と出会い、自分も少しでも若々しい気持ちを取り戻していこう。」
泰三は喫茶店に向かい、いつも通りモーニングコーヒーを注文した。窓の外には、新宿の街並みが広がっている。
泰三はコーヒーを一口飲みながら、今日も一日が始まることを実感した。
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