その色の名を見ると必ず あなたの事を思い出します
皆から好かれているその色は あなたの名前の色でしたから

明るさから暗さのグラデーション 幅広く深く美しく
僕も あなたも その色の事 同じように 同じくらい 大好きでしたね


 拝啓 少女A

 今も この街にいますか

 あなたの隣には 誰がいるだろう
 僕といるより 楽しければいいな、って。

 ふとした人混みに 凝らした瞳
 浅い海に、滲んでは、溺れていく。



毎年十月の初旬には あなたの年が僕に追いつきます
あなたの方が大人な気がしていました 年の差 一ヶ月

今でも十月は重く切ない 僕の生まれ落ちたあの厄日より
あなたのよき日の方がこんなにも 僕にとっては大きいと痛感して


 聞いて 少女A

 届かぬ あの日の言い訳

 自分が生まれた 日が来る前に
 あなたの誕生日 近いな、って。

 あなたを 想って 綴った詩を
 匿名の海に、流しては、藻屑となる。



僕の無言があなたを拒絶した あなたの優しさを無下にした
会えない時間 距離 疎遠になって それでも僕は起き上がる事さえ

あの年僕はあなたに宛てた バースデーカードを出し損ねました
あなたがくれた机上の手紙 日がな一日 何度も読み返しました


 あなたの 贈り物はいつも

 女の子らしい ものでした

 笑顔も声も眼も 何もかも
 優しいあなた そのものだなって、ずっと。

 吐き出せなかった一言 「好き」は
 寄せては返し、あなたに、届かないまま。



一年越しで病床を這い出して 綴じた絵と粗品は紙袋に
あなた色のリボンは秋風に揺れ 電車に乗りました 最前席に

木の葉が彩りを失った 暮れの季節の入り口 夕日影
あなたを笑わせている人の群 僕一人が水差すことも出来ず


 あなたの 隣には僕よりも

 相応しい 人はごまんといます

 けれど 僕のこの隣には
 あなたがいいと 泣く度毎に、インクが減って。

 こんな 詩が届く訳ない
 でも書かなきゃ、あなたとの日々が消える。



身を引いたなどと嘯くなら それは欺瞞であり ただの格好つけ
僕は惨めにも嫉妬しました 周囲の人と 笑ってたあなたにも

渡せずじまいの紙袋を 睨んだまま 終点まで後部席にて
飲み下したエゴと独占欲は 肺と胃が灼け爛れるようでした
 
 
 祝いの席から 連れ出して

 毎年毎年 僕の事

 思い出さずには いられない程
 胸の奥まで、刻み込んでやりゃよかった。

 そんな 甲斐性も 強欲さも
 持ち得なかった、残り滓のような僕。





 僕の 隣は今でも

 代わりのいない 空席です

 取り合われるほど いつかモテたら

 その時はまた、ここに座ってはくれませんか?



  拝啓 少女A

 今も この街にいますか

 どこかで また逢えたその時は

 「ありがとう」と笑う、僕になれてたら。



 聞いて 少女A

 今は 思い出のままで



 あなたに 募る思慕が病気なら

 一生治らず、不治の病であればいい。





   愛を込めて

             敬具

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

拝啓 少女A

その日初めて森山直太朗氏の『生きてることが辛いなら』聴きました。

ええ、泣きましたとも。



割とヘタレですよ。

閲覧数:202

投稿日:2016/07/25 07:57:27

文字数:1,322文字

カテゴリ:歌詞

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