少女の名は、小日向 明日香(こひなた あすか)。中学三年生だ。明日香の通っている、丘の上中学校には一学年、二十クラスもあるという、生徒の多い学校だった。
明日香は付き合っている人がいる。佐野 輝(さの あきら)だ。輝とは三年間、ずっとクラスが一緒だった。が。そんな嬉しい毎日はもうすぐ終わる。方向もまったく違う彼女たちを結んでくれていたのは、丘の上中学校だった。放課後、カップルの多いこの学校の裏庭のベンチで明日香と彼、輝で座り、話し始めた。
「もうすぐ・・・終わりだね。中学校。」明日香が言う。輝は強気で
「でも、きっと高校でも、一緒になれるはずさ。だって山之上高校だろ??」というと、明日香は首を振る。え・・・と輝がうつむくと。明日香はうつむき。
「私・・・・山之上じゃ無い。私・・・ホントは山之上だと思っていたのに・・・・私・・・・・今までずっと山之上だと・・・・彼氏にまで嘘ついてるみたい・・・けど・・・本当なの・・・」今にも泣きそうな顔をする明日香を輝は慰める。「大丈夫。だけどお前・・・・山之上じゃなかったらどこの高校なんだよ・・・?」輝が聞くと明日香は泣き顔を手に伏せて、「富士瓦・・・・」と言った。
「富士瓦って・・・・すっげえ遠いとこだよな・・・・??」輝は、周りのカップルが帰り始めていることに気づくと、「もうそろそろ、帰らなきゃいけない時間だな・・・今日はいいよ。そんなに悲しいのに、わざわざ泣かせるだなんて、彼氏として最悪だ。明日は部活もないし、五時間だし。」
といって、その日は分かれた。
帰りながら輝は思った。「富士瓦まで行っちゃうのか・・・・でも彼氏彼女の関係は変わらない。メアドだって交換してあるんだから、メールのやり取りくらいは出来る。」
するとだんだん寂しくなった。「でも明日香と離れるなんて・・・」
明日香は、明るくてみんなのムードメーカーって感じだ。誰にでも優しくて、パッチリした目が可愛い。周りからも人気が高い女子だ。成績もいいし、たまに輝にも勉強を教えてくれる。
そんな明日香と恋人同士になれただけで輝は幸せだった。けど、分かれなくちゃならないだなんて、ありえないことだった。
明日香は人気が高い。ッということは、富士瓦高校に行って別のもっと成績が良くてハンサムな奴と付き合ったり、しないだろうか?
そんな事を考えていたら誰かに背中を押された。
パンッ。「どーした?輝。元気ないなー。なんだよ、小学生のときまでのはちゃけてたのは何処いったんだよ??」花咲 結花(はなさき ゆか)だ。結花は輝の幼馴染。輝の隣の家だ。
結花の父親は花咲出典の絵本や、漫画、辞典など、さまざまな本を出版している会社の社長。結花はたまに、絵本の挿絵や、漫画を描いて出版してもらったりしている。
結花はなかなかの才能の持ち主であった。頭もいいし。佐田中学校に行っている。あそこはかなりの上級レベルだ。そんな結花にも最近ラブラブな彼氏が出来た。
二人して、佐田高校に行くらしい。あそこも有名な上級レベルの学校だ。
あんなところにいけるだなんて・・・羨ましい。としばらく思っているといきなり、
「あんた、高校行ったら、彼女と分かれちゃうでしょ。さみしいんでしょ?その子はモテるから、他の奴と付き合うかも・・・って思って。」ズバリ当てられた、輝は。
「そーだよ。寂しいんだよ。もぅ、どーすりゃいいの??」輝は白旗を振り上げ、降参した。
「あ、いいこと教えてあげるっ♥」いきなり結花が大声を出し、輝の耳に口を近づける。
「あのね、今年の受験前、流星群、来るんだよ。流星の降る夜、二人でお願いするんだ。
・・・二人のそれぞれの願いを。そのときに、もしも、彼女とあんたの願い事が一緒であれば、きっと、その彼女、転校しないと思う。」
騙しではなさそうな真剣な結花の声。信じよう。そう決心した輝は、明日香を流星群の日に二人で、お願いを言いに行こう。何を言ったっていいんだ。富士瓦高校にうかりますように。でも何でもいいから。
そう言ってふたり、流星の日に、最後のデートに行くことにした。
輝にとっては、一か八かの勝負であった。
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