彼の頭はただ、考えていた。
 ひとつ――この世界に自分がいる意味。
 ふたつ――この世界で起きた夢みたいな出来事。
 みっつ――そして、現実に起きている事態。
 その全てを絡ませ、結論のように呟いた。
「この世界はどうやら少しヤバイらしい」


【これは彼と彼女のお話】

 だが、それを伝えようとも作られてしまった心ではもう言葉も届くことはないのだろう。
 枯れる太陽の音が響き、蒸せる炎天下の目が大地を見つめていた。
 夏バテした世間にはじき出された様な蝉の声がもう鳴り響き始めたとして、この身体では救うこともできない。
「……あの科学者、一体何がしたいんだ……。
 透けてる身体だと?
 死んだからだを蘇らせてくれたのは嬉しいがこれじゃ生き殺しじゃねえか……」
 こんな身体じゃ、彼と彼女を助けるために伸ばした手も届くわけはなかった。


 期待はずれの視界の先で、少年がまた飛び散った。踏み潰された。
 秒針はふざけて立ち止まって、踏み潰された未来を反対車線で見ていた。
 機械仕掛けの世界を抜けて、木の葉の落ちる未来――9月の風景へと、君の目で見なくちゃいけないのか?
 それを知ってか知らずか「ざまあみろ」と言おうとしているのか、少年は笑っていた。



――

「失礼。少しお話を伺いたいのだが?」
 コノハが物思いにふけっていると、ひとりの男が声をかけてきた。
「……誰だ」
「ああ。すまなかった。俺はシンタローというのだが……メカクシ団というのはご存知かな?」
「いいや。」
「そうか」
 シンタローとコノハの会話を、ヒビヤは後で眺めていた。
「……ところで僕をどうするつもりだい? どうせ実験体さ。殺すなりなんなり好きにするがいい」
「ほんとならそうしてやりたいがそうもいかなくてね」
 シンタローは少し怒っているようにも見えた。
「お前をリーダーの元へ連れてくるように言われているのさ。コノハ」
 シンタローはそう言って手を差し伸べた。
 コノハはそれをみて、握り返した。


つづく。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

カゲロウプロジェクト 08話【自己解釈?】

「目を醒ます話」完結。次からは二次創作になります。(二話分くらい)

―この小説について―

この小説は以下の曲を原作としています。


カゲロウプロジェクト……http://www.nicovideo.jp/mylist/30497131

原作:じん(自然の敵P)様

『人造エネミー』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm13628080 
『メカクシコード』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm14595248
『カゲロウデイズ』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm15751190
『ヘッドフォンアクター』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16429826
『想像フォレスト』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16846374
『コノハの世界事情』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm17397763 
『エネの電脳紀行』
『透明アンサー』
『如月アテンション』
ほか

――

閲覧数:934

投稿日:2012/05/25 00:11:33

文字数:859文字

カテゴリ:小説

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